【第三回 事務所説明会レポート①】
元裁判官5名が所属する「訴訟に強い法律事務所」
三村小松法律事務所は、2019年に三村量一弁護士と小松隼也弁護士によって設立されました。当初は所属弁護士数名の小規模な事務所としての出発でしたが、知財・紛争解決・企業法務を中心に事業を拡大し、2026年9月現在では弁護士31名、うち元裁判官弁護士5名という体制へと成長しました。
2026年9月15日、三村小松法律事務所は3回目となる事務所説明会を開催し、対面およびオンラインあわせて約50名の弁護士、司法修習生、ロースクール生にご参加いただきました。事務所の沿革や業務分野の紹介、パネルディスカッション、質疑応答、懇親会などのプログラムを通じて、活発な意見交換が行われました。
本記事では、説明会で語られた内容を踏まえつつ、「なぜ三村小松法律事務所はこの形になったのか?」「どのような理念のもとで事務所づくりを進めてきたのか?」について、小松隼也弁護士の言葉を中心にお伝えしていきます。
事務所の沿革や業務分野、事務所の特徴については下記の記事をご覧ください。
「訴訟に強い法律事務所」をつくる
まず、なぜ「訴訟に強い法律事務所」を作ろうと考えたのか、というところからお話しさせてください。もともと私と三村(量一・共同代表)弁護士は、長島・大野・常松法律事務所の訴訟チームにいました。優秀な人材が揃い、誰もが知る企業の大型紛争やグローバルな案件を数多く手がける、本当に素晴らしい環境でした。
ただ、一つだけ気になっていたことがあります。それは「利益相反」が非常に多かったことです。利益相反というのは、ある依頼者の利益を守ることが、別の依頼者の不利益につながってしまうような、立場が対立する状況のことです。大規模事務所では上場企業のほとんどがクライアントですから、企業同士の紛争になると、相手方もまた依頼者、ということが起こります。特に訴訟はビジネス上の対立も多くて、なかなか訴訟案件を受けられないことがありました。
そうすると、「訴訟チーム」と言いながら、実際には紛争が極端に少ないんですね。契約書のレビューやデューデリジェンス、つまり企業の資産やリスクを事前に調査する作業、あるいはローン案件はたくさんある。でも、「その契約書が最後に法廷でどう扱われるのか」を経験する機会は、思ったよりも少なかったのです。
それなら、利益相反にとらわれず自由に訴訟代理の依頼を受けられる規模で、本当に訴訟・紛争に強い事務所を作りたい。そう考えるようになりました。価値観が一致していた三村弁護士とともに、2019年に立ち上げたのが当事務所です。
法律的な正解を答えること自体は、文献を調べたり、近年はAIを活用したりすることで、比較的すぐに導けるようになってきました。しかし、実務では法律論だけでは解決しない場面が本当に多いんです。たとえば、依頼者が新規ビジネスを始めたいとき、「法律上のリスクがあるのでやめましょう」と答えるのは簡単です。けれども依頼者からすれば、「リスクがあることは分かっている。それでも、どうすれば実現できるかを教えてほしい」というのが本音であることが少なくありません。特にベンチャー企業や新規事業に多いご相談です。
ですから、事業として何を実現したいのかを把握したうえで、「こうすればできるのではないか」と提案する。場合によっては、法律を変えるためのロビイング、つまり立法や政策に働きかける活動まで、私たちはカバーしたいと考えています。
この「依頼者が求めている答えの一つ先」を提案するためには、訴訟の見通しを立てられることが必須なんです。
新規事業にリスクを取って挑戦する後押しは他の事務所でもできますが、「最終的に訴訟で勝てるのか」「規制で違法とならないか」まで判断できることが、非常に重要だと考えています。
元裁判官5名が在籍する体制──「オーダーメイド訴訟」を可能にする強み
元裁判官が在籍する事務所はいくつかありますが、知財部を経験した裁判官経験者がこれだけの人数在籍しているのは、国内でもほとんど例がないと考えています。
裁判官の方々は、経験されている案件数が弁護士とは桁違いです。弁護士が常時抱える件数の2〜3倍を担当されていることも多く、弊所の元裁判官弁護士5名合計で、およそ5,000件もの裁判を経験されている計算になります。この蓄積を、日々の案件で直接引き出せる意義は、非常に大きいと感じています。
しかも、この5名の元裁判官弁護士は知財部以外の経験も豊富です。労働部、行政部、会社法事件の専門部、交通部、医療集中部、破産・再生、遺産分割の専門部など、幅広い専門部の経験を持つ方が揃っています。これだけ多様な専門部を経験した裁判官経験者が在籍していて、しかも気軽に相談できる。ここは当事務所の大きな強みです。
このような体制があるので、弊所では「オーダーメイドな訴訟対応」ができます。ここでいう「オーダーメイド」というのは、クライアントごとのオーダーメイドではなく、「事件を担当する裁判官ごとにオーダーメイド」の訴訟をしよう、という意味なんですね。
ひとえに裁判官と言っても、それぞれ個人の傾向や考え方の違いがあります。法律論としての大筋が大きく外れるようなことはないものの、どのようなロジックを好むか、どのような証拠の出し方を好むかといった点で違いが出てくるのです。
弊所の5名の元裁判官の弁護士たちは、裁判所での経験が長くありますから、他の裁判官の傾向についてもよく知っています。「この裁判官はこういう傾向がある」という点を踏まえて、証拠の出し方や訴訟の進め方を調整していくことが可能なんです。
当事務所には、知財部の合議体、つまり複数の裁判官で審理する体制の合計人数である3人よりも多い裁判官経験者がいますから、複数の元裁判官の意見を聞いて、どれほど確度の高い主張や証拠になっているかを検討できる。これは訴訟戦略を立てるうえで、本当に有益です。
若手弁護士にとっては、司法修習のときに「裁判官にいつでも何でも聞ける」状況が、そのまま続いているような環境です。日々の議論の中で「裁判官だったらどう考えるか」という視点が自然に入ってくるので、判断の筋道を理解するうえで、とても有益だと思います。
ただ、答えがすぐ出過ぎてしまうと、かえって自分でリサーチをする力が育ちにくいという面もあります。そこは「まずきちんと自分でリサーチして考えたうえで、裁判官経験者に相談しましょう」と伝えるようにしています。新人だけでなく、中途で入所した弁護士にとっても、悩んだときに裁判官経験者と日常的に意見交換できる点は、大きな魅力として受け止めてもらえているようです。
多彩なキャリアを持つ弁護士たち──刑事・不競法・音楽・立法の専門家が集う
本日登壇している3名を例に挙げますと、小佐々弁護士は刑事事件を得意とする法律事務所ヒロナカの出身で、大規模な国際的刑事案件も扱ってきました。その後、当事務所に転職したのちに、日本製鉄株式会社でインハウス、つまり企業内弁護士の経験も積んでいます。
黒川弁護士は、経済産業省の知的財産政策室への出向経験があり、不正競争防止法の法改正や営業秘密管理指針の作成に関わってきました。
森川弁護士は、スタートアップの支援を得意とするGVA法律事務所を経て、ソニー・ミュージックエンタテインメントで企業内弁護士として音楽の契約実務を担当した経験があります。
この他にも、スタイリストやファッション記事の編集者だった経歴を持つ弁護士、政策担当秘書の経験がある弁護士、ジュエリーコーディネーターの資格を持つ弁護士、芸能・エンタメ企業で経営に携わった弁護士、ニューヨーク在住で日系企業の海外進出を支援する弁護士など、魅力的な経歴を持つメンバーが数多くいます。当事務所は基本的にチーム制で仕事を進めますから、
- 刑事事件が絡む案件では、刑事に精通した弁護士に相談する
- 営業秘密や不正競争の問題が出てきたら、不正競争防止法を専門とする弁護士に聞く
- エンタメの案件では、エンタメ業界の実務に詳しい弁護士に相談する
といったように、それぞれの分野を得意とする弁護士に日常的にサポートを求めることが可能です。
産業分野に特化し、エンタメ・ファッション・アートまで一気通貫でサポート
日本の企業法務では、会社法、労働法、倒産法、知財、個人情報保護法といった「法律分野」ごとに専門を極めていくのが一般的でした。でも、クライアントの側に立って考えると、事業は一続きのものです。
たとえば会社を設立して株式を発行し、資金調達をして、商標登録をする。従業員を雇い、模倣品が出てくれば対応し、発明が生まれれば特許を取得する。広告の撮影や広告規制の確認をして、個人情報を取り扱い、時には不祥事や刑事事件が起こるかもしれない。最後には会社を売却したり、承継、清算する。会社を経営していると、実にさまざまな分野の法律が関わってくるわけです。
大規模事務所ではこれを各法律分野の専門家に分担していくことが多いのですが、依頼者からすると一続きの話です。そしてよく聞かれるのが、その業界特有の慣習なんです。「法律ではこうでも、うちの業界ではこうではない」「力関係が強くて、それは言えない」といった事情まで察知してアドバイスできるか。ここが実務では非常に重要です。
私自身、約10年前にニューヨークのロースクールに留学した際、ファッションロー、アートロー、エンターテインメントローといった、産業に特化した講義が数多くありました。特定の産業の慣習や当事者の関係性を学んだうえで、複数の法律分野を扱い、一気通貫で会社をサポートする。当時の日本にはまだ少なかったこの発想に、大きなカルチャーショックを受けたんです。
その産業の構造、文化、商慣習、専門用語を知ったうえで対応すると、クライアントは「共通言語がある」というだけで、大きな安心感を持ってくださいます。ファッションやアートであれば、デザインや建築といった近接分野へ、AIやITに近いテクノロジー系のクライアントへと、隣接する産業分野が横につながって広がっていく。そういう相乗効果もあるんですね。
エンタメと一口に言っても、その中には非常に幅広いジャンルがあります。当事務所の場合、芸能事務所、音楽、ダンス、ゲーム、アニメ、漫画、映画といった領域を扱っています。ここまで幅広くカバーできている事務所はかなり少ないと考えていて、当事務所の非常に強い部分だと思います。
上場企業から個人クリエイターまで、様々なクライアントをサポート
知財、特に特許紛争に関しては、国内外の大企業や上場企業、海外企業が直接相談に来ることも多々あります。一方で、エンタメ分野ですと、中小規模のクライアント、ベンチャー企業、個人の方も多くいらっしゃいます。
ファッションやジュエリー、建築の分野では、2〜3名で運営しているような小規模の会社も多いですし、個人のクライアントの方も非常に多いです。そういったクリエイター、アーティスト、アスリート、研究者といった個人の方々のほか、企業法務の労務案件では、従業員側からのご相談を受けることもあります。
三村小松法律事務所では、使用者側・労働者側のどちらか一方の弁護を強く打ち出しているわけではなく、産業に特化する形で企業と従業員の方のご相談を双方から受けています。この点は、当事務所の性格をよく表していると思います。
割合でいうと、上場企業の案件は規模が大きく重いので、件数だけ見れば中小企業・個人の方が多くなります。一方で、売上ベースではちょうど半々くらい、業務量も同じくらい、というイメージですね。
チーム制と歩合制、働き方とカルチャー
弊所では基本的に先輩弁護士と必ずチームで案件に対応します。最初の数年間は一人で案件を任せることはなく、成果物についてはオールレビューを行います。ここは学習の機会と捉えていただければと思います。
とはいえ、自分のやりたい案件に取り組めない、ということはありません。個人事件も担当できますし、「この分野をやりたい」と希望すれば優先的に回すようにしています。当事務所がまだ扱っていない専門領域に挑戦したい場合も、知り合いを紹介したり、事務所を使ったイベントやセミナーの開催を実施したりと事務所全体で応援する体制があります。
働き方の面では、30代・40代の子育て世代が多く、リモートワークができる環境が整っています。席はフリーアドレスで、文献やリサーチ関係のシステムは事務所で揃えています。ライフステージに合わせて、柔軟に働き方を調整できるようにしています。
1年目と2年目は、歩合にこだわらず、さまざまな案件を経験して勉強してほしいという考えから、固定報酬に加えて稼働時間に応じた賞与を支給する形にしています。3年目以降は、働いた時間に応じた歩合制です。ライフステージが変わる方も多いので、子育てや留学準備を優先して稼働時間を下げることも、自分のやりたい分野の営業やセミナーのために調整することもできます。逆に「たくさん働きたい」という方には、案件は豊富にあります。
稼働時間の目安は、おおむね月100〜200時間の間としています。月200時間はいわゆる四大法律事務所の水準に近いと考えていますが、私自身が長島・大野・常松法律事務所で10年ほど経験した実感として、私生活に影響が出るとも感じているので、事務所として推奨しているわけではありません。むしろ、自分の時間をしっかりと確保して、各産業分野の当事者、プレイヤーの方と過ごす時間を増やしたり、法律の学習やセミナーの準備など、自身が本当に取り組みたいことに使える時間を作ってもらうほうが大切だと考えています。
クライアントへの請求は、各弁護士の経験年数に応じた「1時間あたりの作業単価」を基準にしています。単価には相当のレンジがあって、弁護士の経験の豊富さや案件や相談の内容に応じて、相場観に合うよう主任弁護士が見積もりを調整します。
歩合制のメリットは、仕事を人に振りやすいということです。固定報酬制だと、いくら働いても報酬が同じなので、心理的に業務を抱え込みがちになります。たとえば複数のクライアントから同時に締め切りの近い依頼が来た場合、物理的に対応しきれないことがありますよね。そうしたとき、歩合制であれば「働いた分がその弁護士の報酬に反映される」ので、遠慮なく助けを求めやすくなるんです。
一方で、歩合制には事務所ごとの違いもあります。事務所によって「実際に稼働した時間分を払う」タイプと、「クライアントが実際に支払った分から歩合を計算する」タイプがあるんです。後者の場合、稼働してもクライアントとの関係で回収できず、報酬が減額されることもあります。三村小松法律事務所では、前者の実際に稼働した時間分で各弁護士への支払いを行っており、クライアントへのディスカウントは事務所側でカバーする体制を取っています。歩合制の事務所を検討される際は、この違いを見極めることも大切だと思います。
次回レポートでは、小佐々奨弁護士、黒川直毅弁護士、森川そのか弁護士によるパネルディスカッションの様子をお伝えします。どのような経緯で三村小松法律事務所に入所したのか、どのように仕事に取り組んでいるのかなど、具体的なお話をご紹介します。
三村小松法律事務所では一緒に働く仲間を募集しています
三村小松法律事務所は、「クライアントが求める答えのひとつ先を提案する」を理念として、業界慣習、グローバルな知見に精通した弁護士、裁判官経験者らによるチームが実践的なサービスを速やかに提供することを目指しています。
当事務所の理念や目標に共感し、常にチャレンジ精神を持ち、各業界分野への興味やこれまでの経験を活かしたいと考える、意欲ある弁護士を、新卒採用・中途採用で募集いたします。
詳細・募集要項はこちら
登壇弁護士プロフィール
小松 隼也(こまつ じゅんや)
三村小松法律事務所 共同代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所の訴訟チームにて大型紛争およびグローバル案件を多数担当した後、2019年に三村量一弁護士とともに当事務所を設立。米国ロースクールへの留学を通じ、ファッションロー、アートロー、エンターテインメントローを研究。産業分野に特化したリーガルサービスを日本において展開。知的財産を軸としつつ、著作権、アート、エンタメ、建築など幅広い分野を担当。「依頼者が求める回答の一つ先を提案する」を理念として掲げる。
※レポートの内容及び弁護士のプロフィール情報は本記事作成時点の情報です。
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