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  • 不祥事対応に強い「救急医型」弁護士
    訴訟・刑事・知財の交差点(後編)


    【インタビュー/小佐々奨弁護士】

    「自社で何か問題が起きたとき、誰に相談すればいいのか分からない」。企業の経営者や法務担当者の方から、こうした声をよく耳にします。不祥事や不正は、起きてからの対応はもちろん、起きる前の予防までを見据える必要があります。
    本記事では、訴訟・刑事・知財を中心に複数の領域を横断してきた小佐々奨弁護士に、三村小松法律事務所での業務や不祥事対応、AI時代の弁護士像について伺います。

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    訴訟を軸に、不正調査・第三者委員会、知的財産、刑事事件まで複数領域を横断

    ——三村小松法律事務所は、どのような事務所ですか?

    三村小松法律事務所は、人数の割に職人性が強く、「三村小松でしか対応できない」という尖った部分がありつつそれぞれの個性を残しながら、有機的な一体感を持って動ける事務所だと思います。特にエンタメ分野などにスペシャリストが揃っています。
    現在30人規模の事務所になっていますが、これからも「この先生はこうだよね」という個性が消えていない事務所でありたいですね。

    それから、三村小松法律事務所の強みの一つは、元裁判官の弁護士が多いことです。それも数年裁判官をしてすぐ退官されたような方ではなく、長年にわたって第一線で裁判官実務を経験してこられた方々です。
    事実を認定して法律を当てはめる、という仕事を長く担ってこられた方々ですから、調査案件のような「どんな事実をもってどう判断するか」が問われる場面で、非常に頼りになります。
    私自身、積極的に意見を聞くようにしています。こうした実務経験豊富な先生方の知見を、みんなで活用しながらチームで案件に取り組めるのもこの事務所ならではだと思います。

    ——三村小松法律事務所での現在の主な業務を教えてください。

    主軸はやはり訴訟案件ですが、それだけにとどまりません。大きく分けると、次のような業務を手がけています。

    • 一般的な民事事件、家事事件等の相談案件や調停・訴訟案件
    • 知的財産の相談案件・訴訟案件ハラスメントや不正の社内調査(調査する側・調査を受ける側双方のサポート)
    • 第三者委員会・特別調査委員会の委員としての外部調査
    • 一般的な刑事事件や企業関連の刑事事件への対応
    • 出向経験を活かした、企業の社内業務のサポート

    事務所内で刑事事件対応が必要な案件が発生すると、これまではほとんどを私が対応していました。現在は戦力も増強されていますので、今まで以上にチームでの対応が可能になると思っています。
    刑事事件については、まさに法律事務所ヒロナカで培ったものであり、これからも大切にしていきたいと思っています。

    その他に、最近は企業における不正や不祥事の調査業務にも注力しています。現在も上場企業の特別調査委員会の委員に選任いただいております。
    このような調査案件は、どこに証拠があるか検討し、関係者のヒアリングを行い、入手した証拠を整理し、法的に当てはめ・評価をしていくという、これまで私が注力してきた訴訟で培った知見を活かせるものと考えています。こうした調査関係の業務は、ハラスメント調査のような社内向けのものから、社外の第三者委員的な立場まで幅広いです。

    不祥事対応に強い弁護士とは──「救急医型」という考え方

    ——そうした現在の業務も踏まえてご自身の強みはどこにあると考えていますか?

    正直なところ、突き抜けて「これが得意だ」と言えるものがあるとは思っていません。刑事事件に特化して無罪をいくつも取っている同世代がいたり、特許訴訟を何十件も手がける先生がいたり、一つの分野で抜きんでた先生方をたくさん知っていますから。

    ただ、いろんなものが交差する地点に立っていると、多少の個性は出てくるのかなと考えています。私は昔から一つの分野を深く突き詰めるスペシャリストより、幅広く状況を見て動けるジェネラリストでありたいと思ってきました。イメージとしては、医者でいう「救急医」のような存在です。
    何か困った状況に陥ってしまった時に、まず大怪我にならないよう初期対応をする。原因を紐解いて方向づけをし、必要な対応をとったうえで、より専門的な処置が必要なら、信頼できる専門医、すなわち各分野のスペシャリストと共に対応する。そういう役割を担える弁護士でありたいと思っています。

    ——「救急医型」弁護士はどのような場面で特に活きるのでしょうか。

    まず挙げられるのは「不祥事対応」ですね。
    不祥事対応にはハラスメントや不正の調査、第三者委員会・特別調査委員会への関与、刑事事件への対応、発信前のリスクチェックといった予防的な危機管理まで、本当にいろいろな種類があって、求められる対応は事案ごとに異なります。終わらせ方についても、必ずしも正解があるわけではありません。
    だからこそ、複合的な要素を交えながら、初動段階から視野を広くもって判断していく必要があり、いろんなものを横断して見られる「救急医型」の発想と相性がいいと思っています。

    ——その他に企業法務における強みとは、どんなところにありますか。

    企業出向を通じて企業の中を経験したことで、企業からのご依頼や弁護士に期待されている対応への解像度が格段に上がりました。
    もちろん私が出向した日本製鉄は国内最大級のグローバル企業であり、必ずしもその他の企業が同様だとは思っていません。しかし、企業を理解する基準・軸ができたことで、色々な企業の方々とやりとりする時にも企業内の多方面についての意識できるようになったと思っています。

    また、企業法務の世界で刑事事件を自ら扱う弁護士はあまり多くありません。多くの企業系の弁護士は、刑事が絡むと事務所内であったり事務所外であったり他の弁護士に回してしまうことが多いです。でも私は回さずに自分のところで受けとめます。もし利益相反等の関係で私たちの事務所だけ対応することが難しい場合は、ヒロナカを含め他の事務所と協力することも可能です。会社の代表者や従業員が思わぬ形で刑事事件に巻き込まれることは、決して珍しくありません。
    そういう意味でも、まさに「救急医型」の総合的な対応として、訴訟を軸にしながら刑事・知財・調査を横断して動けることが、私の今の立ち位置になっています。

    今後さらに専門性を高めたい分野

    ——今後、特に力を入れていきたい分野はありますか?

    やはり不祥事対応・危機管理分野をしっかりやっていきたいですね。これまで多方面で積んできた経験が、最も重なっている分野だと感じているので。

    不祥事対応というと、何かが起きてからの事後対応をイメージされるかもしれません。もちろんそれも重要ですが、私はその手前の予防、つまり広い意味での危機管理までを射程に入れたいと考えています。

    ——不祥事への予防的な対応とは具体的にどのようなものがありますか?

    たとえば、出版社が誰かの名誉を毀損する恐れのある記事を掲載しようとする際、事前に弁護士がシビアな目で内容をチェックすることがあります。「もし訴えられたときに勝てるのか」という観点です。これは典型的な予防的対応ですね。

    企業の広報担当者やインフルエンサーなどには、炎上後ではなく、「これを発信しようと思う」という事前の段階で相談してもらえれば、リスクを事前に伝えられます。仮に炎上したとしても落ち着いて対応することができます。

    企業であれば、内部通報制度のような、何か問題に気づいたときに早い段階で相談できる仕組みをあらかじめ作っておくことも予防になります。問題が大きくなる前に見つけやすくする制度を整えるわけです。

    予防のあり方は、対象が企業なのか、芸能人や政治家といった個人なのかによってさまざまです。企業であれば、株主や債権者といったステークホルダーに対して、説明責任が問われますよね。一方で、芸能人や政治家のように、社会からの評価やイメージに伴って仕事をしている人も、その評価が信用や仕事に直結します。
    ただ対象は違っても、対外的な信用を守るという点では共通しています。だからこそ、「前もって気軽に一言相談できる関係性」を作っておくことが大切だと思っています。

    ——不祥事対応のほかに、現在関心を持っている分野はありますか?

    これから避けて通ることはできない分野として、AIに関する法務がありますね。実際多くの企業や個人が既に導入しており、これからますます重要になっていく分野だと思っています。私自身、AIという技術自体がそもそも興味分野でもありますので、積極的に関わっていきたいと考えています。
    ただし、私の場合は、AIによるトラブルを解決する分野というよりは、「弁護士によるAIの活用」や「AIが普及する社会の中で弁護士がどうあるべきか」といった分野に関心があります

    ——AIの普及によって、弁護士の仕事はどのように変わっていくと考えていますか?

    ゆくゆくは、法的な分野であっても様々な作業をAIが担うようになると思います。ソースをある程度絞れば、AIで綺麗にまとめることはすでに業務に組み込まれつつありますから。訴訟における証拠や、調査におけるデジタルフォレンジックで検出された証拠について、網羅的に漏れなく拾ってくるような作業は、AIが非常に得意な分野であるといわれています。

    ただ、法分野によっては「正解」がないこともあります。知的財産などは特にそうで、学者の先生でも見解が分かれる世界です。最終的には「この先生はこう判断すべきだと考えている」という意見や主張が必要になる。そこには良くも悪くも権威性の部分があるので、AIが同じようなロジックを出せても、弁護士ならではの役割は残ると思います。
    私としては、結局のところ、最後は弁護士がちゃんと確認し、判断をしていくことが大切だと思っています。「AIは間違っている」と拒むのではなく、賢く使い分けるほうが正解だと思いますね。ミスを減らせて、少ない労力でたくさんの命を救えるのであれば、「救急医型」の弁護士にとっては歓迎すべきものだと思っています。

    ——AIが担える仕事が増えていく中で、これから弁護士になる人には、どのような力が求められると思いますか?

    学生さんにはいつも、「とにかくいろんな経験をしてほしい」と伝えています。それも、自分で実際に身をもって味わった現実の経験です。人付き合いでも、アルバイトでも、旅行でもなんでも。

    人間は予想外の動きもしますが、「人ってこうだよね」という部分もある。そんな当たり前なことが、人々の活動の中で生じる法律問題を取り扱う法曹にとってはとても大切なことだと思っています。法律の知識やAIだけに触れていると、実際に動く人たちの動きが読めません。たとえばメールという証拠も、「メールを残したい」と思って残しているわけではなく、「この人とこの人が連絡を取り合いたい」という人の営みの結果として残るものです。

    どんなに証拠を見つけ出す技術が発達しても、その人の動きを想像できなければ、技術を使い切れません。だからこそ、いろんな経験をして想像力を養った人が、最終的にどの分野でも優れた弁護士になるのだと思っています。


    不祥事対応・危機管理のご相談は三村小松法律事務所へ

    三村小松法律事務所では、企業の不祥事対応・不正調査・危機管理に関するご相談を承っています。「相談すべきか迷う」という段階こそ、早めにご相談いただくことで取り得る選択肢が広がる場合があります。具体的な対応方針については、個別の状況によって異なりますので、専門家へのご相談をお勧めします。まずはお気軽に、無料相談のご予約からお問い合わせください。

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    プロフィール

    小佐々 奨(こささ しょう)
    刑事事件・知的財産・企業訴訟を横断的に手がける。法律事務所ヒロナカに入所し、社会的に注目を集めた著名事件の刑事弁護や大規模な弁護団事件に携わる。その後、三村小松法律事務所へ移籍。日本製鉄株式会社への出向を経て、企業内法務(インハウス)の実務も経験。現在は、一般民事や家事事件等の様々な訴訟案件のほか、ハラスメント・不正の社内調査、第三者委員会・特別調査委員会の委員、知的財産関連の相談・訴訟などを中心に活動している。

    【2026.8.31】


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