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  • 【事務所説明会レポート②】
    弁護士の「キャリア」と「強み」の作り方


    三村小松法律事務所は、2019年に三村量一弁護士と小松隼也弁護士によって設立されました。
    当初は所属弁護士5名の小規模な事務所としての出発でしたが、知財・紛争解決・企業法務を中心に事業を拡大し、2026年3月現在では弁護士24名の体制へと成長しました。

    2025年11月20日、三村小松法律事務所では初めてとなる事務所説明会を開催し、対面およびオンラインあわせて約30名の弁護士、司法修習生、ロースクール生にご参加いただきました。
    事務所の沿革や業務分野の紹介、パネルディスカッション、質疑応答、懇親会などのプログラムを通じて、活発な意見交換が行われました。

    本記事では、小松隼也弁護士、新田真之介弁護士、田邉幸太郎弁護士、宮澤真志弁護士によるパネルディスカッションの内容から、それぞれのキャリア形成、強みを持つ分野の作り方などについてお伝えします。

    三村小松法律事務所への転籍という選択

    小松
    それでは、キャリアチェンジを経験してきた3名の弁護士の皆さんに、これまでの歩みや当事務所に転籍した理由を伺っていきたいと思います。
    まずはジュエリー業界に強みを持つ新田真之介弁護士。自己紹介とこれまでの仕事についてお話しいただけますか?

    新田
    66期で、弁護士としては13年ほどになります。
    弁護士になって最初に所属したのは、5〜6名規模の中小の法律事務所でした。そこでは主に損害賠償訴訟、とりわけ保険会社側の案件を数多く扱っていました。若手の頃は、いわば「交通事故の被告側の百本ノック」のような状態で、常に百件単位の事件を抱えていたと思います。

    そんな中、ある時期から時計や宝飾品の損害額が争点となる案件を立て続けに担当することがあり、それをきっかけに、ジュエリーという分野に興味を持つようになったんです。
    周囲には医療や車に詳しい弁護士はいても、時計やジュエリーに強い人はほとんどいなかった。じゃあ自分が深掘りしよう、と。そこから独学で業界研究を始めました。
    真似から入るタイプなので、よく冗談で言うのですが「弁護士ドットコムを真似してジュエリードットコムを作った感覚」で、ジュエリー業界に弁護士としてどう関わることができるのか個人的に試行錯誤していました。
    そうした活動を続けているうちに、三村小松法律事務所に所属しているファッションやアートの専門家の先輩方と出会い、学会や勉強会でも視野が広がり、転籍を意識し始めました。

    三村小松法律事務所には、特定の業界に特化した弁護士が多く、その取り組みを近くで見られる環境がある。そこが魅力的でした。
    また、代表の小松弁護士から「産業分野に強い弁護士が百人いれば、日本の産業はもっと強くなる」と真顔で言われて、単純に“すごいな”と思ったんです。自分は当時、業界特化=依頼者が増える、くらいの発想しか持っていなかったので、その視点に刺激を受けたのが転籍の決め手でした。

    小松
    ありがとうございます。次は田邉幸太郎弁護士。アニメやキャラクター分野に強みを持ち、最近では生成AIの分野でも講師や取材の依頼が多くなっています。

    田邉
    67期で、弁護士12年目です。
    弁護士を目指したそもそもの理由は、アニメやゲーム、漫画がとにかく好きで、コンテンツに携われる仕事に就きたかったからです。ただ、漫画家や声優のような技術職にはなれないと悟り、法律と好きなものを掛け合わせて弁護士の道を選びました。
    ただ、就職活動ではコンテンツ系の事務所に落ち続けてしまい、最初は新田弁護士と同じような、損害保険系の顧問事務所に所属しました。交通事故、医療、施設損害など典型的な損害賠償を大量に扱い、3ヶ月で交渉案件が50〜60件降ってくるような環境で、最初の証人尋問も6ヶ月目に経験しました。
    弁護士としての基礎体力はかなり鍛えられた一方で、今後コンテンツ領域に進むには、企業法務や知的財産の分野に軸を移さないと難しいとも感じるようになり、2つ目の事務所へ転籍しました。そこでは著作権・商標を扱う機会もあり、4年ほど、一人で訴訟を回しながら経験を積みました。

    2020年に三村小松に転籍したのは、知財に強い専門家が集まる環境でさらに成長したいと思ったからです。
    また、小松弁護士と話す中で「弁護士が提示するべきはAとBの選択肢ではなく、必要なら『僕ならAです』と言える姿勢だ」という考え方に共感しました。単に保守的にリスクを伝えるだけでなく、一歩踏み込んで自分の判断を示す。そんな法務サービスを実践していきたいと思い、転籍を決めました。

    小松
    最後に、宮澤弁護士。
    訴訟・紛争を軸に、知的財産(著作権・特許権)、破産、企業支援、個人の相続・離婚事件まで、幅広い分野を取り扱っています。

    宮澤
    69期で9年目です。
    弁護士を目指したきっかけは実はそれほど明確な理由があったわけではありません。単純にテレビドラマで弁護士が困っている人を助ける姿を見て、かっこいいと思ったのが最初のでした。高校や大学で部活のキャプテンを務めることが多く、人から相談されることも多かったので、その延長で「誰かの力になる」という仕事に惹かれました。
    当初は街弁として離婚・相続・労働・破産など、個人が困っている場面を直接支える仕事に興味がありました。しかし、司法試験後の就活時期に、ドラマ『下町ロケット』が流行していて、中小企業の知財トラブルに弁護士が関わる姿を見て、「現場で頑張る人の背中を押すのも弁護士の役割なんだ」と強い印象を受けました。
    そこから企業法務や知財分野にも関心を広げ、この分野に強い三村小松法律事務所への転籍を決めました。
    実務では、個人案件も企業案件もどちらも担当しますが、どの場合も「依頼者の信頼に応える」姿勢は変わらないようにしたいと思っています。


    未経験から特許分野への挑戦

    小松
    さきほど少し話に出ましたが、田邉弁護士と宮澤弁護士は、当事務所の中でも特許訴訟を担当することが多いメンバーです。特許案件は専門事務所に集中しやすいというのもあって、特許訴訟を経験する弁護士は多くありません。
    お二人とも、もともと特許を専門にしていたわけではない中で、どのように特許訴訟に関わるようになったのか、転籍後のリアルな経験や苦労も含めて聞かせてください。

    田邉
    私は立ち上げメンバー4名に続く“5人目”として事務所に入ったんです。
    三村弁護士が前の事務所から移籍したことで、特許案件が一気に入ってきていたのですが、当時はマンパワーの問題で対応できる人がいなかった。「これ誰がやるの?」「田邉、いけるよね?」みたい感じで、完全に流れで次々と特許案件に突っ込まれていったというのが実際です(笑)
    私はユアサハラ法律特許事務所出身の野瀬弁護士みたいにもともと知財系のバックグラウンドがあったわけでもなく、特許の実務経験はゼロ。司法試験の知財科目で勉強した程度で、もう一度ゼロに近いところから知識を入れ直すところからのスタートでしたね。

    技術が難しいのはもちろんなのですが、特許はとにかく法律が難しい。一般的な企業法務であれば、法律を勉強し直せば対応できる場面も多いのですが、特許訴訟は技術の理解が必須、それも表面的ではなく一歩踏み込んだ理解が求められます。依頼者からの技術説明を正しく咀嚼し、裁判所に伝わる言葉に翻訳する必要があるんです。
    で、私が悩んでいると、三村弁護士に「高校の化学の教科書を読め」と言われまして。冗談半分だったと思うんですが、私は真に受けて、参考書を買って通読しました。もちろんそれで劇的に理解できるようになったわけではないんですけど、ああいう愚直さは特許分野では本当に必要だと思います。

    宮澤
    僕は、田邉弁護士が内閣府に出向されるタイミングの少し前に特許訴訟の大規模案件に入ることになったんです。「1件目を追随していけば大丈夫だから、宮澤くんでもいけるよ」と言われていたのに、気づいたら1件目からすべて自分が主担当になっていました。
    最後の説明会のメインパートはやっていただいたのですが、徐々に案件からフェードアウトしていく田邉弁護士を見ながら、正直「あれ、いつの間に……」という感じはありました(笑)

    ただ、さっきの話にもありましたが、特許訴訟って、技術者レベルの“専門知識”が求められているわけではないんですよね。裁判官も理系出身ではないことがほとんどです。だから、技術者にとっては当たり前のことでも、そのまま説明しても伝わらないことが多い。
    結局、必要なのは、技術者の説明を正しく理解して、それを裁判所に伝わる形に翻訳する力。これって実は、一般の企業法務でも共通する能力なんですよね。 技術に対するアレルギーさえなければ、誰でも入れる領域だと思います。
    私は前職でシステム開発や建築など、毎回分野の違う訴訟を担当しており、初めての技術と向き合う感覚には慣れていたので、その経験はすごく活きていると感じています。

    田邉
    分野によって難易度は大きく違いますよね。たとえば、物として形がある特許であれば、実際に触ったり測ったりしながら理解できます。でも私たちが多く扱ってきたのは、成分組成や化学、医薬など、目に見えない世界が多い。ずっと画面を見ながら、依頼者のデータを追い続けることもあります。
    でも、そういう“技術的な美しさ”のような部分に惹かれる人もいると思うんです。特許は、そういう人にはすごく向いていると思います。

    小松
    事務所に入ったばかりの頃は、三村弁護士や先輩弁護士とどうやって仕事を進めていましたか?

    宮澤
    私は、自分の意見はもちろん出しつつ、上の人たちの書き方にフィットさせることを意識していました。特許案件はチームでやるので、三村弁護士がいて、その下に先輩弁護士がいて、当時の私は一番下。だから自分の色を出すというより、まずはチームの書面に寄せる。一度寄せた上で、自分なりの改善案を出す、という感じでした。

    田邉
    僕もそうでしたね。見て学ぶ期間が1年半くらいあって、そのあと急にメインの案件が回ってくる。育て方としては荒療治だけど、結果として一気に成長するんです。

    小松
    特許に挑戦したい人へのメッセージがあればお願いします。

    宮澤
    特許訴訟は、確かにハードルが高く見える。でも、実際にやっている弁護士のほとんどが、特許の専門家として入ってきたわけじゃない。“未知の技術を理解し、それを言語化する力”があれば、誰でも入れる世界です。

    田邉
    そうですね。技術が得意じゃなくても大丈夫。ただ、嫌悪感だけはない方がいい。
    私も高校の化学の教科書を読み返したくらいですし、最初はみんな同じ。興味があるなら、ぜひ飛び込んでほしいです。
    一般的に、「理系出身じゃないと特許訴訟は無理」と考えている人がすごく多いですが、まったくそんなことはありません。むしろ特許訴訟の現場では、文系出身の弁護士の方が、技術者の話をいったん普通の言葉に戻して整理できる分、裁判官に伝わる説明ができることも多いと思い。技術の細かい部分は、依頼者が教えてくれます。

    特許に必要なのは、「柔軟な理解力」「咀嚼力」「伝達力」、そして「技術へのアレルギーがないこと」。この4つだけです。本当に。

    弁護士の営業 ― 人とのつながりが生む仕事の広がり

    宮澤
    以前から気になっていたのですが、お二人にはどのように講演依頼が来るんですか?
    私は三村弁護士が特許関係の講演をやるときに一緒に登壇するか、あるいは事務所を通して依頼が来て私が担当する、という流れがほとんどなんですよ。
    でも、弁護士に直接来る講演依頼というのはどういう経緯で来るものなのでしょうか? SNSで見つかるのか、メディアなのか、口コミなのか。

    田邉
    私への依頼の中心は、やはり生成AI 関連と「声の権利」ですね。声優さんの権利問題や、VTuberを含めたキャラクタービジネスの案件などが多いです。
    それらに関する講演依頼は割と飛び込みで来ることが多いです。例えば、私は声優関係の団体の幹事を務めているのですが、その団体で記者会見を行った際に、「あの記事を見ました」とか「現場で話を聞きました」と声をかけていただくことがあります。
    それから、論文を書いたり、地道に発信を続けているのも影響していると思います。「声の権利」に関する論考を早い段階からまとめていたので、それを引用してくださるメディアや研究者の方が多く、そこをきっかけに「あの領域の専門家に話してほしい」と依頼をいただくこともあります。

    宮澤
    三村弁護士の古稀記念論文集に載っていた論文ですよね。あれは引用が多いと聞きました。

    田邉
    あとは取材がきっかけになることもあります。以前、日本経済新聞さんがアニメの海賊版に関する問題の大規模な特集を組んでいたときに、ちょうど私が登壇したシンポジウムにその記者の方が来ていて、「次の企画でコメントをお願いできますか」と声をかけていただいたんです。
    そこから、朝日新聞さん、東京新聞さん…という形で取材が連鎖していきました。大手紙でコメントすると、さまざまな媒体の記者の方が見ているので、それをきっかけに講演依頼や新しい案件につながることが多いです。
    ただ、正直めちゃくちゃ怖いですよ。初めて自分の名前が訴訟以外の文脈で社会に出たときは、「社会に晒される!」みたいな感覚があって本当に震えました。

    新田
    僕は、いわゆる大手法律事務所の「王道のPR」、例えば法律雑誌に論文を書いて露出を増やすといったことはこれまで一度もやったことがなくて。その代わりに、Instagramとか X(旧Twitter)といったSNSをちゃんと動かす、ということを続けています。
    ジュエリー業界に関するニュースがあれば、短くてもコメントしたり、自分が参加したイベントの様子を投稿したり。また、ジュエリー業界って東京ビッグサイトとかで大きな商談フェアがあるのですが、そこには必ず足を運ぶようにしています。
    それで移動中に簡単に投稿したり、その日のハイライトをまとめたり、そういう形で更新を続けています。
    あとは、呼んでいただいたイベントについては、少しでも恩返ししたくて、ブログのようなレポートを編集して投稿します。これはもう、純粋に「お礼を言語化したい」という気持ちですね。

    宮澤
    Podcastもずっと続けていますよね。

    新田
    Podcastは、相談に来てくださった方に「せっかくなのであなたのこともインタビューさせてください」とお願いして収録させてもらっているんです。それでその人のことがよく分かるし、誰かを紹介するときも「この人はこういう方です」と説明しやすくなる。

    小松
    ジュエリー業界団体では勉強会の幹事をされているんですよね。

    新田
    そうですね。ジュエリー協会の理事をしていて、その流れで勉強会の幹事もやっています。
    小松さんの言葉でよく耳にするのが、「”弁護士だから”という理由で限界を作らない」という考え方なんですよね。僕もそれにすごく影響を受けていて。
    例えば、接客ロールプレイングの研修に社員の方々と一緒に参加したりする。「それ弁護士の仕事じゃないでしょ」と言われてもおかしくないことも普通にやります。
    というのも、多くの人が弁護士に対して壁を感じてるんですよね。「ああ、弁護士さんですね。困った時はお願いします」っていう、あの距離感。あの壁があるうちは、相談って絶対に来ないんです。僕はむしろ、「あ、そういえば弁護士でしたよね?」くらいがいいなと思っています。

    田邉
    めちゃくちゃ大事ですよね、それ。「何かあったら相談しますね」と言われるのは、弁護士なら誰でも経験があると思います。あれって、「今は別に困ってないです」という婉曲表現なんですよね。でも本当は、表に出てないだけで課題は絶対ある。
    業界イベントで名刺交換をすると、「あ、弁護士なんですね…」ってちょっと引かれることがあるんですよ。弁護士は一緒にものづくりをする人ではなく、トラブル対処のための存在。まだまだそう見られていると感じる場面はあります。

    小松
    まあ、それは仕方ない部分もあるんだけど、だからこそ「どうやってその壁を取り払うか」が大事なんですよね。私は基本として、「とにかく一緒に遊ぶ」というのを意識しています。遊ぶ=価値観や視点を共有するという意味で。
    弁護士って、知識だけで言えば文献を調べれば皆それほど差はないんですよ。文献も調べないような弁護士もいますが、きちんと文献を調べれば、回答内容はそんなに変わらない。だからこそ、相談してもらうには、「弁護士のハードルをどれだけ下げられるか」が勝負になるんです。
    だから私は、業界の人たちと同じ目線で横に並ぶために、「自分がまず客になる」というアプローチをしました。アート業界であれば、とにかく作品を買いまくる。
    業界に深くかかわるようになってくると、「小松さんと知り合うと、いいアーティストを紹介してもらえるかも」と思われるんです。そうなると、他の業界の人から自然にコンタクトが増えていきます。
    結果的に事務所がこういう作品に囲まれた状態にはなってますけど楽しいですね。


    次回、第3回レポートでは、参加者から寄せられた質問事項についてお伝えします。

    【2026.3.6】


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