【第二回 事務所説明会レポート 後編】 説明会Q&A
-事務所の制度、キャリアの広げ方、今後の展望
三村小松法律事務所は、2019年に三村量一弁護士と小松隼也弁護士によって設立されました。
当初は所属弁護士5名の小規模な事務所としての出発でしたが、知財・紛争解決・企業法務・海外対応を中心に事業を拡大し、2026年4月現在では弁護士30名の体制へと成長しました。
2026年4月7日、三村小松法律事務所では2回目となる事務所説明会を開催し、対面およびオンラインあわせて約30名の司法修習生、ロースクール生、学部生にご参加いただき、事務所の沿革や業務分野の紹介、パネルディスカッション、質疑応答、懇親会などのプログラムを通じて、活発な意見交換が行われました。
本記事では、杉本直樹弁護士、海老澤美幸弁護士、宮澤真志弁護士によるパネルディスカッションの内容をもとに、異なるキャリアを歩んできた弁護士たちがどのように専門性を築いてきたのか、また、クライアントとの関係構築や業界との関わり方についてご紹介します。
事務所の沿革や業務分野、事務所の特徴については下記の記事をご覧ください。
事務所の制度と働き方
新卒弁護士の採用スケジュールについて教えてください。
小松
このオープンオフィス・事務所説明会の後、2026年夏頃に採用情報をホームページ等にアップし、面談・書類提出・複数回の面談というプロセスを経て採用を進める予定です。
当事務所は多数採用を行う方針ではなく、時間をかけてお互いをよく知った上でご縁を結びたいと考えていますので、最終結果のご連絡は他の事務所より少し遅くなる可能性があります。アットリーガル等への掲載も予定しておりますので、そちらでご確認いただければと思います。
所属弁護士会の委員会活動への参加について、事務所の考えを教えてください。
小松
ぜひ積極的に参加していただきたいと思っています。共同代表の三村弁護士からも、委員会活動には積極的に参加するよう促されているほどです。
委員会活動を通じて事務所外の弁護士とのネットワークが広がりますし、共同受任の機会につながることもあります。事務所の案件のみを最優先に、という考えは当事務所にはありませんので、法整備支援や国際活動、研究活動なども含め、所属弁護士会の委員会活動には自由かつ積極的に取り組んでいただければと思います。
年俸・報酬体系について教えてください。
小松
1年目は、月額50万円・年600万円を最低保証とし、そこに実稼働時間や本人の意欲などを踏まえて賞与で調整を加えるという形を考えています。頑張っていただいた方には相応の賞与をお支払いできる設計にしたいと考えています。
1年目はまず、やりたい案件・やりたい仕事を優先していただければと思っていますので、稼ぎよりも希望に応じた案件を担当していただける形で調整します。2年目以降はペースアップを想定していますが、新卒2年目の前例がまだないため、現時点では考え方の共有という形になります。
3年目以降は実績次第でかなり差が生じており、事務所サイトに記載のとおり、月額80万円から月額300万円程度まで幅があります。それだけ個人の裁量と実績が報酬に直結するということでもありますので、ご参考にしていただければと思います。
留学への支援制度はありますか。
小松
三村小松法律事務所から海外の大学院に留学する弁護士も増えてきたので、支援制度を設計したところです。生活費と学費のすべてを全額支援することは難しいですが、生活費については補助することができるような形での支援を用意しています。
留学支援を受ける場合には、留学までに三村小松法律事務所の業務に携わってもらった期間と、帰国後に留学経験を活かしてもらう期間を踏まえて金額を調整しています。現在留学を予定している所属弁護士との協議を経て、内容や金額については流動的に変更する可能性がありますが、事務所としては、留学を始めとした様々なキャリアを応援することができるような体制を整えていきたいと思います。
案件チームの編成や方針決定はどのように行われていますか?
小松
チームメンバーの決め方は、まず物理的な忙しさを考慮した上で、基本的には希望者にお願いするというのが原則です。ファッションをやりたくて入所した弁護士にはファッション案件を、エンタメをやりたい方にはエンタメ案件をお任せする形です。加えて、隣接領域の知見が活きそうな案件については、適した方に声をかけるようにしています。
意見が複数出た場合は協議で決めます。当事務所には元裁判官の弁護士が複数在籍しており、議論を非常に好んでくださいます。上位者が意見を押しつけるのではなく、チーム全員で意見を出し合って方針を決めていくスタイルをとっています。
キャリアの広げ方と得意分野の作り方
業界経験がない中で、ビジネス的な視点をどのように養われましたか。
宮澤
私はタスクがないと動けないタイプなので、とにかくいろいろな案件に入れていただくことが一番の学びになっています。案件をきっかけに、その都度周辺領域を広げていく形で、システム開発、スタートアップのファイナンス、各ビジネスモデルに関する書籍など、法律に関係のない本も自宅に揃えて、関連するタスクが生じたらその都度掘り下げるようにしています。
加えて、飲み会や業界のイベントに参加して実際に携わっている方々と話すことも大切にしています。「相場観はどのくらいですか」「サービスをこのように変えたらどういう影響がありますか」といった話をする中で、文献からは得られないリアルな知見を吸収できます。書籍から得る知識と、現場の方々との対話から得る知識、この両輪で少しずつビジネス的な視点を養ってきたというのが正直なところです。
ジェネラリストな弁護士になるために、修習生や若手弁護士に求められる経験は何でしょうか。
小松
離婚・相続・交通事故・刑事事件など、いわゆる一般民事・家事事件を幅広く経験することが、ジェネラリストへの近道だと思います。企業法務は当事務所には豊富にありますが、一般民事もぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思っています。勉強は案件をやることが一番です。また、一般民事を経験してきた先輩が在籍していますので、企業法務系の事務所では聞けないことも気軽に相談できる環境があるのは当事務所の強みだと思っています。
杉本
私も1年目は離婚事件が一番多かったです。そこから徐々に企業法務寄りになってきました。最初から分野を絞らない方がいいと思います。一般民事を経験しているからこそ、その後のキャリアで視野が広がることは多いです。
ファッションローヤーを目指す場合、留学ではどのようなことにフォーカスすべきでしょうか。
小松
私が留学をしていたフォーダム大学はファッションローを立ち上げた大学ですので、非常に充実した学びがありました。ファッションローという分野は、会社設立から債権回収、商標、M&A、企業の閉鎖まで実に幅広い分野をカバーしています。
留学して驚いたのは、ファッション業界特有の資金繰りについて豊富な仕組みが存在することでした。コレクションで半年先の商品を発表し、それを受注・製造・納品・回収するというサイクルの中で、半年間の資金ギャップが生じます。これを解消するために銀行が融資制度を設けていたり、ファクタリング会社が債権を買い取る仕組みがあったりするのですが、フォーダムの授業ではファクタリング会社の代表が講義をしてくれました。日本では銀行の融資か商社が入るケースが多いのですが、ファイナンスの様々な仕組みを専門会社の代表から聞く機会などなかったので、大きな気づきを得ることができました。
また、フォーダムはファッション専門のFITという学校と連携しており、デザイナーの卵たちと直接意見交換できる環境が非常に良かったです。留学先ではこうした実務的な内容や、現場の方々とのライブな意見交換を大切にしていただくことをお勧めします。
留学で得た知識はファッションデザイナーや業界の方々に還元できており、アジア諸国の弁護士からもファッションローに関する問い合わせや連携の話をいただくことがあるなど、現在の業務に大いに活きています。
弁理士資格を取得することのメリットはありますか。
小松
実務修習を受けて弁理士登録した弁護士はこれまでにもおります。当事務所はファッションやベンチャー関連で商標出願の件数が非常に多いため、商標出願ができる弁理士資格は大きな強みになります。
また、会社を設立した際に最初に専門家に相談するタイミングが税理士か商標かというケースが多く、商標出願を入り口にクライアントとの接点が生まれることも少なくありません。知財戦略全体に関わっていきたい方にとっては、取得を検討する価値は十分にあると思います。
杉本
当事務所の黒川弁護士も弁理士資格をお持ちで、専門性の幅広さという意味での印象はやはり違いますね。
エンタメ分野でのやりがいと葛藤を教えてください。
杉本
やりがいは、やはり自分が関わった作品が世に出る瞬間に感じます。映画のクレジットに名前が入ったり、クランクインからクランクアップまで現場に張り付いて監督の横でモニターを見ながら議論した作品が完成して公開されたりする時、その過程を知っているからこそ感慨深いものがあります。そういった経験が他の案件にも活きて、現場の方々と深いコミュニケーションが取れるようになっていくことも大きなやりがいです。
葛藤については、法律的に整理した内容が現場では「そんなの関係ない」と言われることがあるという点です。特に興行結果が思わしくなかった場合に責任転嫁が生じ、事前に交わしたコミュニケーションの記録があっても感情的なすれ違いが起きることがあります。そういった時に、契約書でどこまで書くべきか、このトピックはニュアンスが大事なので口頭でコミュニケーションすべきか、といった細かい課題意識を持ちながら、日々トライアンドエラーで考えています。葛藤はおそらく永遠になくならないと思いますが、だからこそ毎回新しい挑戦があって楽しいとも感じています。
刑事事件も受任していますか。
小松
積極的に受任しております。私自身、刑事事件は非常に好きな分野です。
当事務所には刑事専門の事務所で長年経験を積んだ小佐々弁護士がおり、企業不祥事が生じた際の刑事弁護にも対応できる体制を整えています。刑事事件を積極的にやりたい方にとっては先輩から学べる環境が整っていますので、ぜひ取り組んでいただきたいと思っています。
今後の展望
今後、注力していきたい分野について教えてください。
杉本
エンタメ・芸能以外では、食産業や一次産業の分野に長年関心を持っています。エンタメと地方創生、食はかなり近接した領域だと思っていて、チームで取り組めるようになればと構想しています。
もう一つはAI・Web3です。流行としてではなく、これからのインフラとして不可欠になっていくと考えていますので、当事務所でもAI・Web3案件に対応できる体制を整えていきたいと思っています。
海老澤
ファッション分野から外れることはないと思いますが、その中で今後深めたいのは環境関連の法規制です。グリーンウォッシング規制やEU・フランスをはじめとする各国のサステナビリティ関連法規制が急速に整備されており、海外展開を考えるファッション企業にとって非常に重要なテーマとなっています。社外役員を務める会社でもサステナビリティ経営の議論は避けられませんし、各国の動きが速く複雑なこともあって、非常に興味深くやりがいのある分野だと感じています。
宮澤
一つは知財戦略です。ジェネラリストとして幅広く経験してきたことを活かしながら、オープン・クローズ戦略など知財をビジネス戦略として活用する分野を深めていきたいと思っています。
もう一つはスポーツです。学生時代からずっとスポーツに関わってきましたので、いつかはスポーツ分野でも仕事をしたいという思いがあります。
小松
スポーツは私も取り組みたい分野で、現在も海外との交渉案件をいくつか手がけています。
また、ファッション・アートに続く柱として建築・デザインを育てていきたいと思っています。そして食のグローバル展開に関するビジネス相談も増えていますので、この分野も一つの柱にしていきたいと考えています。担いたいという方がいれば、ぜひ一緒に取り組みましょう。
第一回事務所説明会のQ&Aはこちら
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