言語切り替え
  • 【エンタメロー海外編 / セミナーレポート 前編】
    エンタメコンテンツ海外展開のリアル ― アプリ・映像・ゲームビジネスの国際対応―


    海外展開を検討する際、「どの国の法律に対応すればいいのか」「現地の規制に違反したらどうなるのか」と頭を抱える法務・総務ご担当者は多いのではないでしょうか。
    特にエンタメコンテンツの分野では、プライバシー・未成年保護・著作権・商標など、複数の法的リスクが複雑に絡み合います。日本国内では一般的な表示やサービス設計であっても、海外では規制対象となったり、現地当局・プラットフォーム・ユーザーとのトラブルにつながったりすることがあります。

    2026年4月21日に開催された、三村小松法律事務所主催のMIKOTAMAセミナー#08「エンタメコンテンツ海外展開のリアル ― アプリ・映像・ゲームビジネスの国際対応―」では、海外展開戦略に詳しい久勇介弁護士と長谷川未緒弁護士が、海外へのデジタルコンテンツ展開時の主要な規制と実務対応について解説を行いました。

    本記事では、同セミナーの内容をもとに、アメリカ・韓国・中国・台湾など主要市場ごとの規制と、エンタメ企業が海外展開時に押さえておきたい実務上の注意点を整理してご紹介します。

    アメリカ展開時の主なチェックポイント ― COPPA・CCPA・アクセシビリティ・ガチャ規制

    アプリやゲームをアメリカで展開する際には、①子どもの個人情報保護(COPPA)、②カリフォルニア州プライバシー法(CCPA/CPRA)、③アクセシビリティ対応、④ガチャ(ルートボックス)規制という4つのポイントを事前に確認する必要があります。

    ① COPPA(子どものオンラインプライバシー保護法)

    COPPA(Children’s Online Privacy Protection Act)とは、13歳未満の子どもからオンラインで個人情報を収集・使用・開示する場合に、事前に保護者への通知と同意取得を義務付けるアメリカの連邦法です。違反した場合、1件あたり最大約5万ドルの罰則が科されます。

    同意取得の方法は連邦取引委員会(FTC)がガイダンスを公表しており、実務上多くのサービスが採用しているのが「Eメールプラスまたはテキストプラス(Email Plus/Text Plus)」方式です。この方式は、子どもから収集した個人情報を第三者に開示せず、自社のみで使用する場合に限って利用できます。手続きの流れは以下の通りです。

    1. 保護者へEメールまたはSMSを送信する
    2. 保護者からの同意を取得する
    3. 一定期間後に確認メールを再送し、同意撤回の機会を設ける

    アプリの冒頭で年齢確認のために生年月日を入力してもらう場合がありますが、この生年月日の収集自体については、FTCのFAQ上、COPPA違反とはならないと整理されています。

    COPPAのエンフォースメントの件数自体は多くはありませんが、罰則額が非常に大きいのが特徴です。例えば、Epic Gamesの事例では違反に関する和解として、2億7,500万ドルの支払いに合意しました。その他の事例でも2,000万〜2,500万ドル程度の和解事例が複数あります。
    未成年保護に関する規制は、アメリカ・ヨーロッパを含め、各国で厳格化の方向にあります。子ども向け、または子どもにも利用され得るアプリ・ゲームを展開する場合には、サービス設計の初期段階からCOPPA対応を検討しておくことが望ましいでしょう。

    【参考】FTC:Children’s Online Privacy Protection Rule : A Six-Step Compliance Plan for Your Business

    【よくある質問 1】問い合わせ対応のためにメールアドレスを取得してもよい?

    カジュアルゲームなど個人情報をほぼ収集しないサービスでも、問い合わせ対応のためにメールアドレスを取得する場面があります。以下の条件をすべて満たす場合は、保護者の同意なしにメールアドレスを収集することが認められています。

    • 対応後はメールアドレスを削除する
    • ユーザーからの特定の1件の質問に対してのみ、1回限りで対応する
    • そのメールアドレスを問い合わせ以外の目的で使用しない

    【よくある質問 2】IPアドレスを取得するだけでも保護者同意が必要?

    IPアドレスもCOPPAで定められた個人情報に含まれます。
    ただし、内部オペレーションのサポートのみに使用する場合は保護者の同意が不要とされており、実務上多くののアプリ・ゲームがこの解釈に基づいて対応しています。

    ② CCPA/CPRA(カリフォルニア州プライバシー法)

    CCPA(California Consumer Privacy Act)は、カリフォルニア州の個人情報保護法です。その後、CPRA(California Privacy Rights Act)による改正を経て、個人情報の取扱いに関する事業者の義務や消費者の権利が拡充されました。日本でも広く知られていますが、まず自社が適用対象に該当するかどうかを確認することが重要です。
    いくつかの要件がありますが、適用対象の目安としては、前暦年の年間総売上が2,500万米ドル以上(インフレ調整されるため、現在は、2,662万5,000米ドル以上)であるかが一つの基準となります。ここでいう売上は「カリフォルニア州の売上」ではなく、日本・ヨーロッパを含めた全世界の売上合計で判断されます。もっとも、売上基準を満たさない場合でも、カリフォルニア州住民または世帯の個人情報を一定規模以上取り扱う場合や、個人情報の販売・共有から一定割合以上の収益を得ている場合には、CCPAの適用対象となる可能性があります。
    CCPAで特に注意が必要なのが、「第三者への個人情報の販売・共有(Sell・Share)」の規制です。第三者に個人情報を販売・共有する場合のユーザー同意の要件は、以下のとおりです。

    • 13歳未満:保護者(親権者)の積極的同意(オプトイン)
    • 13〜16歳:ユーザー本人の積極的同意(オプトイン)
    • 16歳以上:ユーザーが「共有したくない」と申し出た場合に停止(オプトアウト)

    オプトアウトについては、サイト・アプリ内に「Do not sell or share my personal information」というリンクを設置することが法律上義務付けられており、さらにメール・電話・郵送など、リンク以外の方法も用意する必要があります。
    AppleやGoogleなどの主要プラットフォーム事業者は、CCPAの「第三者共有に当たらない」契約者(契約受託者)の要件を満たす規約(DPA)を整備しています。個人情報を共有している事業者のDPAを確認することで、自社の対応状況を整理しやすくなります。

    ③ アクセシビリティ(ADA法・CVAA法)

    アクセシビリティとは、障害のある方も健常者と同等のサービスを受けられるよう対応する義務のことです。
    アメリカでは、障害者差別を禁止するADA法(Americans with Disabilities Act:米国障害者法)がアクセシビリティ対応の基礎となりますが、実店舗を持たないオンラインサービスにADA法がどこまで適用されるかについては、裁判例上も議論があります。
    もっとも、ゲームに関しては、CVAA法(Twenty-First Century Communications and Video Accessibility Act:21世紀通信・映像アクセシビリティ法)により、ゲーム内のチャット機能など一部の通信機能についてアクセシビリティ対応が求められることが明確になっています。

    • 音声チャットがある場合 → テキスト変換(字幕・テキスト読み上げ)機能が必要
    • テキストチャットがある場合 → 音声読み上げ機能が必要

    なお、ゲーム全体への対応義務があるわけではなく、チャット・ソーシャルインタラクション機能を持つ部分に限定されます。

    ④ ルートボックス(ガチャ)規制

    ガチャ(ルートボックス)については、アメリカをはじめ世界各国で規制の議論が活発になっています。
    アメリカでは、ガチャが「賭博」に該当するかどうかが争点となっています。賭博の判断基準は州法によって異なりますが、一般的に以下の3要素がそろうと賭博と判断されます。

    • コンシデレーション(対価):ゲーム内通貨の購入など、何らかの経済的拠出がある
    • チャンス(運):スキルでなく抽選(ランダム)で結果が決まる
    • プライズ(景品):現実世界で価値のあるものを獲得できる

    アメリカ展開時にガチャを実装する際は、獲得できるアイテムを「ゲーム内でのみ使用できるもの」に限定し、現実通貨への換金・譲渡・売買を不可とする旨を利用規約に明記することで、「プライズ」要件に該当しないよう整理するのが実務上の定石です。

    【参考】原神インパクト・FTC訴訟事例
    2025年1月、FTCは人気ゲーム人気ゲーム「原神インパクト(Genshin Impact)」の運営会社に対して2,000万ドルの支払いなどを内容とする和解を発表しました。
    問題とされたのは、
    ①13歳未満ユーザーの個人情報を保護者の同意なしに収集していた点(COPPA違反)
    ②レアアイテムが「高確率で出る」と広告したが実際には確率が著しく低かったという「ダークパターン」(FTC法違反)
    の2点です。
    和解条件には「16歳未満ユーザーのルートボックス使用に保護者の許可が必要」「ガチャの排出確率の開示」が含まれています。

    各国のガチャ規制の状況は国・地域によって大きく異なります。現地の規制動向を個別に確認することが重要です。

    • ベルギー:有料ルートボックスについて厳格な規制あり
    • オランダ:換金性やゲーム設計によっては賭博規制上問題となり得る
    • ブラジル:2026年3月に法改正。18歳未満は使用禁止。
    • オーストラリア:有料ルートボックスを含む場合は15歳以上向けの区分
    • 欧州・PEGI基準:有料ランダムアイテムは原則16歳以上向けの区分

    アジア展開のポイント —韓国・中国・台湾の規制と商標戦略

    アジア圏への展開では、韓国のいわゆる映画ビデオ法によるレーティング義務、中国での冒認出願(商標の先取り)対策、台湾での今後の法整備の動きに注目が必要です。
    また、国ごとに「未成年」の年齢定義も異なるため、利用規約や表示方法を日本国内向けの仕様のまま横展開するのではなく、各国に合わせて設計する必要があります。

    韓国:映像コンテンツ・ゲームのレーティング対応

    韓国では「映画及びビデオ物の振興に関する法律(映画ビデオ法)」に基づき、映像コンテンツのレーティング(年齢区分)審査が法律で義務付けられています。対象は劇場用映画にとどまらず、DVDなどのパッケージ商品、オンライン配信作品、さらに近年急増しているショートドラマも含まれます。

    審査は、原則として映像コンテンツごとに映像物等級委員会が行い、全年齢・12歳以上・15歳以上・19歳以上の等級に区分されます。大手プラットフォームでは、扱うコンテンツ数が膨大なため、「独自等級分類事業者」として認定を受けて自社内で審査を行う形で対応している例もあります。一方、日本から映像コンテンツをライセンスする場合は、ライセンス先や現地の協業先を通じて、必要な等級分類の対応をすることが現実的です。

    2024年末ごろから韓国当局による取り締まりが急に強化され、これまで審査を受けずに配信していた事業者が一斉に指導を受けるケースがありました。もともとあった法律でも、運用の厳格化によって突然対応を迫られることがあるため、常に最新の状況を把握しておく必要があります。特に海外での規制対応は、現地の運用や実務を踏まえた判断が必要となるため、現地関係者と連携できる専門家に早めに相談することが望ましいです。
    なお、韓国では、ゲームについても、PCゲーム・スマホゲーム・オンラインゲームを問わずすべてにレーティング取得が義務付けられています。

    韓国:アプリ内通貨・未成年者保護

    韓国では、アプリ内通貨を購入したユーザーに対して購入後7日以内のキャンセルを保証する義務があります。
    日本では、オンライン取引を含む通信販売において、法律上クーリングオフ制度を設ける義務はありません。そのため、日本向けサービスと同じ感覚で課金導線を設計すると、現地法令やプラットフォーム上の要件に適合しない可能性があります。

    また、国によって未成年者に該当する年齢が異なります(日本:18歳未満、韓国:19歳未満、タイ:20歳未満)。そのため、国ごとに、未成年者による契約取消しの可否、年齢確認・保護者同意、課金制限の範囲を確認する必要があります。
    このように、アプリ内通貨の販売方法や、未成年保護に関する機能の設計は、サービスを展開する国ごとに見直す必要があります。

    中国:商標の冒認出願対策と著作権登録制度

    中国でコンテンツを展開する際に多くの日本企業が直面するのが、「冒認出願」問題です。冒認出願とは、権利を持たない第三者が先行して商標を出願・登録してしまうことで、エンタメコンテンツ分野でも頻繁に発生しています。
    対応手段としては、以下のものが挙げられます。

    • 中国でのマーケティング開始前に、できる限り早期に商標を出願する
    • 注力コンテンツの場合、作品名だけでなく、主要キャラクター名、ロゴ、作品内で重要なアイコン・モチーフ等についても出願を検討する
    • 自社が出願・登録している商品・役務区分とは異なる区分で冒認出願される可能性もあるため、定期的にモニタリングする

    もし冒認出願されていることを発見した場合、公告から3ヶ月以内であれば異議申し立てをすることが可能です。また、登録されてから正当な理由なく継続して3年間使用されていない場合には、不使用取消請求を検討することもできます。
    近年、中国ではグローバルビジネスを呼び込む観点から、商標に関する判断が従来より基準に沿ったものになりつつあるとされており、適切な手続きを行えば、冒認出願に対して有効な対応を取れる可能性は十分あります。
    また、中国には「著作権登録制度」があります。日本と同様に著作権は創作と同時に発生しますが、中国では登録証書を取得することで、冒認出願への異議申立てや、各プラットフォームへの侵害コンテンツの削除申請において、証明が容易になります。

    台湾:OTTサービス規制の今後の動向に注目

    台湾では現在、「インターネット視聴管理法(NETFLIX法・OTT法とも呼ばれる)」の立法が検討されています。
    同法案については、事業者登録、一定の行為規制、コンテンツの適切なレーティング、利用者保護などが論点とされてきました。もっとも、現時点ではなお制度設計や関係者間の調整が続いている段階であり、具体的な義務の内容や適用対象については、今後の立法動向を確認する必要があります。


    中編では、海外展開で注意すべき各国共通ポイント、海外法律事務所の活用方法をについてご紹介します。

    登壇者

    久勇介(ひさし ゆうすけ)
    米国Cardozo School of Law留学後、米国法律事務所に勤務。
    日本企業の米国進出支援、コンテンツのライセンス契約交渉、海外展開戦略サポートを中心に手がける。
    現在は、ゲームおよび映像コンテンツの海外展開支援を主軸に、未成年ユーザー保護やプライバシー法など、デジタルコンテンツを取り巻く関連規制分野のリーガルアドバイスも提供。日米間の法制度の違いを踏まえた実務的なサポートを強みとする。

    長谷川未織(はせがわみお)
    動画配信プラットフォーム「Hulu」を運営する企業の社内弁護士を務め、コンテンツのライセンス契約、制作契約など幅広い契約実務とアプリ事業に関する規制対応を担当。現在は、映像・音楽などのデジタルコンテンツ分野の案件を中心に、国際的なコンテンツビジネスに関する契約・権利処理・規制対応を含む法務アドバイスを提供している。

    お悩みの前に、お気軽にご相談ください

    「自社のアプリ・ゲームが海外で法的に問題ないか確認したい」「利用規約・プライバシーポリシーを海外展開向けに整備したい」「コンテンツのライセンス契約を弁護士にレビューしてほしい」—そんなお悩みがあれば、まずは三村小松法律事務所の弁護士にご相談ください。
    三村小松法律事務所には、アプリ・ゲーム・映像・音楽などのエンタメ/デジタルコンテンツ分野の海外展開に精通した弁護士が所属しています。海外取引先との英語での契約交渉、事業スキームの構築、契約条件の整理、紛争対応まで、コンテンツビジネスの実務に即したリーガルサポートを提供しています。

    ご依頼・お問い合わせはこちら

    【2026.6.19】

    法律相談・メディア出演のご相談はこちら

    お問い合わせ

    MiKoTamaメルマガ
    法律に関する様々な情報トピックをメルマガで配信

    登録する