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  • 業界のインサイダー的視点を強みに、
    クリエイターに伴走するエンタメ弁護士


    【インタビュー/森川そのか弁護士】

    ダンスと音楽への情熱を原点に、エンタメ業界を志した森川そのか弁護士。スタートアップ法務から大手音楽レーベルの契約実務を経て、2026年の春弁護士業務を再開し、三村小松弁護士事務所に移籍しました。
    常に表現者に寄り添う姿勢で音楽・ダンス業界の未来を見据えながら、唯一無二の存在になりたい、という森川弁護士にインタビュー。SNS時代に揺れる音楽ビジネスの最前線についても聞きました。


    ダンスと音楽への情熱を原点に、エンタメ法務の道へ

    ―まず弁護士になられたきっかけをお聞かせください。

    高校時代にストリートダンスに出会ったことがきっかけで、Funk、Disco、Soul Music や、アフリカンアメリカンカルチャー全般を深掘りすることが好きになりました。最初はMOTOWNから入って、そのあとはPhiladelphia Soulや西海岸系に移っていった感じです。それとは別軸で90年代のR&Bも好きで。有名どころのアーティストでいうと、Michael Jackson、Stevie Wonder、Quincy Jones、Tower of Power、The O’Jays、TLCとか…だめだ、もう止まらなくなりますね。とにかく、漠然とではありますが、その頃から自分は将来エンタメ関係の仕事をするものだと思い込んでいたんです。笑 他のお仕事がピンと来なかったんですね。ただ、一般的なルートで大学を卒業してエンタメ企業に就職したとしても、その中での競争に埋もれてしまうと、主体的な立場で関わるのが難しいのではないか?と感じていて。そこで弁護士資格を持っていれば専門性と希少性を武器に、業界でより能動的に動けるのではないか?と考え、法科大学院へ進みました。
    弁護士としてのキャリアは、アーリー・シード期のスタートアップ企業支援を中心とした法律事務所からスタートしました。そこでは日常的な法律相談から資金調達、ビジネスを立ち上げる際の適法性調査など幅広い案件を担当していました。

    ―その後、音楽レーベルの契約部に転職されたそうですが、法務部でなく契約部でのお仕事を選ばれた理由は?

    そもそも音楽レーベルに転職した経緯なのですが…音楽業界は歴史のある会社が多く、スタートアップ企業を支援しているような新しい事務所にはご依頼があまりなかったんです。でも私は依然として、自分はエンタメ、特に音楽の仕事に携わるものだ、と思い込み続けていたので…笑 ちょうどそのタイミングで、色々なご縁も重なったので、思い切って転職しました。
    ただ、レーベルの法務部はコーポレート業務や日々の法律相談を担当していて、法律事務所で経験してきた業務と少し被る気がしたんです。他方で、契約部は制作現場と法務部のちょうど真ん中のポジションで、レーベルの制作現場が締結する契約を担当する部署であるという説明をうけました。より制作現場に近いところで仕事がしたかったので、迷わず契約部を選びました。また、業務内容も専門性が高く、何十年も同じ部署に在籍している人がいるにもかかわらず、まだ弁護士が一人もいない部署であるとも聞いていたので、普通の弁護士が経験できないニッチなキャリアを積めると感じたことも決め手でした。

    ―契約部ではどんなお仕事をされていたのでしょうか?

    メインの業務は、レーベルとアーティストの間の著作権・著作隣接権に関する契約でした。それ以外にも、法務部に相談するにはハードルが高いような、「とりあえず合意書を作りたい」とか、「これ契約上はどうなってましたっけ?」といった日常業務で発生する細々とした相談ごとが契約部には寄せられることが多かったですね。
    法務部と現場との中間的な立ち位置なので、必要があれば法務部に橋渡しをしたり、契約部内で解決したり、柔軟に対応していました。

    ―本当に現場に近いところですね。

    そうなんです。企画や制作進行などリアルタイムで感じながらの業務でしたので、現場からの悩みも聞きやすい環境でしたね。良いものを作りたい!という現場の熱意…というよりも激しめの熱風に常にさらされていました。最高でしたね。笑 また、音楽などエンタメのコンテンツはなかなか価値をつけにくい部分もあるので、印税率や価格設定の相場感を知れたことは貴重でした。他にも、芸能・音楽事務所との付き合い方とか、業界特有の不文律や温度感等…インサイダーでないと分からないことは多くありました。
    あとは最近SNSの普及によって増えてきた“自炊系”のアーティストとの対し方も大きな学びとなりました。

    ―自炊系”とはどのようなアーティストを指すのでしょうか?

    作詞、作曲、音源制作、歌唱、プロデュースまで全てを自分たちで手がけるアーティストのことを「自炊系」あるいは「DIY系」アーティストと勝手に呼んでいます。かつては作詞家や作曲家、プロデューサーがそれぞれ別に存在し、アーティストはパフォーマンスに専念するというスタイルが多かったのですが、最近ではSNSを通じて宣伝から配信までを自ら行うケースも増えています。
    今までも、事務所やメジャーレーベルに属せない/あるいは属したくないから全て自分でやっている、という人はいたと思いますが、最近ではSNSでプロモーションができるし、TuneCore等を使って配信もできるので、敢えて関係者を広げずに自己完結させることで収益をアーティスト自身に集中させる、というのも一つの魅力的な選択肢になっています。
    もちろん、全部自分でやる大変さはあるので、そういう意味でも事務所やレーベルの存在意義は揺るがないと思います。ただ、「自炊系」「DIY系」アーティストとメジャーレーベルが一緒にやっていきましょうってなると、メジャーレーベル側が柔軟に役割を変えることはあります。例えば、日本ではまだまだCDの人気はそれなりにありますが、敢えてCDではなくサブスク中心の売り出し方を考えたり、今まで以上にアニメのタイアップや地上波の出演に力を入れたり、「自炊系」「DIY系」アーティストが自身だけでやっているとなかなかリーチできないファン層の積極開拓を行ったり、付き合い方を工夫することでうまく共生しているように感じます。

    音楽ビジネスで培った視点を、表現者の力に

    ―SNS時代における、音楽業界の法務的な問題はどんなことがありますか?

    レコード会社は基本的にアーティストと専属契約を結んでいるので、例えばA 社とB社のアーティストたちがコラボした場合、「専属解放」といって、その原盤に限り他社アーティストの参加を許可するという形をとります。「アーティストA featuring アーティストB」のような場合、AがBに解放料を支払う仕組みです。ただ、問題は昨今増えているTikTokなどのショート動画やYouTubeなどでAとBがコラボ配信した場合はどうするのか? というケース。厳密に言えば、解放料が発生する案件として都度許諾が必要です。
    ただ相互コラボは今では主流だし、SNSをメインフィールドとして売れている人たちも最近は多いので、そこを一律に都度許諾とするとかなり手間だし、結局誰も幸せにならない、という構造的なジレンマはありますね。じゃあ包括で許諾するのか、ってなると、結局「専属とは?」って話になってきます・・・。

    ―なるほど・・・そんな中、音楽業界で働く、という夢が叶った状況でもあったと思いますが、三村小松へ転職されたのはどんな経緯だったのでしょうか?

    私自身、「踊る弁護士」として、仕事を続けながらずっとダンスを続けてきているので、ダンサー仲間からさまざまな相談を受けていたんです。会社では副業は認められていたので離婚や相続など一般民事の事案を受任するのであれば問題なかったのですが、ダンスの事業に関する相談となるとゆくゆくは会社と利益相反が生じる可能性が出てくるなと思いました。同じエンタメ業界のステークホルダー同士なので当たり前ですよね。私は今までエンタメ、音楽系の仕事をするものだ、と信じて疑わずに来たわけですが、弁護士としてそういった仕事をするのであれば、ダンサーやアーティストにもっと寄り添って動きたいな・・・と思ったので、会社を離れる決意をしました。
    三村小松にはアートやエンタメ系弁護士の交流や、前々職の法律事務所経由で存じ上げている方が何人かいらっしゃいました。その方達への信頼感があったので、自分自身も事務所の一員として働いていくことへのイメージも自然と持つことができました。

    ―今後はどのようなお仕事に取り組んでいきたいですか?

    前職で培った専門性を活かしながら、エンタメ分野の法務にコミットしていきたいと考えています。実際に、入所してすぐにエンタメ、音楽系の多くの案件に触れることになったので非常にありがたい環境です。
    音楽業界はもちろん、ダンス業界にも力を入れていきたいです。ダンス業界は音楽に比べるとまだニーズは少ないですが、今、ダンス人口は子供から高齢者まで確実に増えているので、自分もダンスを愛するひとりとして業界の成長に貢献できたら嬉しいですね。

    ―ダンス業界の法務整備としてはどんな課題がありそうですか?

    多いのはインストラクターさんの契約にまつわる相談ですね。あとは、権利関係、労働条件、スタジオ経営、興行関連等…幅広く存在します。ダンサーに限らず、たとえニッチな分野であってもクリエイティブな人たちがより良い創作ができるための環境を整えるサポートしたいと思っています。
    お酒を飲んで、音楽談義をするついでに法律相談ができる弁護士、のような立ち位置で、クリエイターたちが気軽にコミュニケーションできる存在となれたら理想的ですね。


    プロフィール

    森川 そのか(もりかわ そのか)
    弁護士法人GVA法律事務所、ソニー・ミュージックエンタテインメントを経て現職。
    音楽、キャラクター、芸能・報道、ベンチャー支援、知的財産を中心に、スタートアップとエンターテインメントの両分野に注力する。

    【2026.6.5】

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