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  • アートフェア

    【Culture Blog】
    最新リポート! 現代アートとデザイン、ヨーロッパ周遊


    事務所では現代美術の専門業務も多く扱う代表弁護士の小松隼也。
    いちコレクターとしてもアート収集を続け、また特に写真に関しては弁護士登録後に写真学校のプロカメラマンコースを卒業したたという経歴も。

    この夏小松が周遊した、スイス、デンマーク、イタリアのアートフェアや展覧会、そしてデザインの潮流についてリポートします。

    SWITZERLAND

    アートバーゼル(ART BASEL)

    アートバーゼル

    アートバーゼルは3月に香港、6月にバーゼル、そして12月にマイアミで開催されますが、やはり本丸の“バーゼル・バーゼル”は規模が違いますね。どのギャラリーも有名作家のシグネチャー作品を持ってきており、会場が広いので1日では見きれないくらい。

    今回自分は写真を中心に見てまわり、ヴォルフガング・ティルマンスの作品を3点購入しました。目星をつけて行っても、実際会場で作品を見て気持ちが変化する、ということもありますね。

    会期の1日前には「Unlimited」というタイトルに相応しい超大型作品に特化した企画展がバーゼルのメイン会場横でオープンしました。
    通常、アートフェアではギャラリー毎にブースを持って、その中で複数の作家が展示されていますが、こちらは作家ごとに1ブースを設けているのが特徴。
    自分も長年敬愛している写真家ロバート・フランクのThe Americansが全作品展示されているブースや、草間彌生、塩田千春、マーク・マンダースなど、主に美術館向けと思われる大きなスケールの作品ばかりが並ぶさまは壮観でした。

    この企画がアートバーゼルが始まる前に公開されているという流れも重要で、フェアとしてビジネスライクになりすぎない工夫なのかな、と感じました。

    バイエラー財団美術館(Fondation Beyeler)

    アートバーゼルに行く醍醐味のひとつがバイエラーを見ること、と言っても過言でないくらい、毎年意欲的な展示をしている美術館。
    今年は「SUMMER IS OVER」というグループ展で、バイエラーとしては初の試みとなるアーティストたちの自主企画展でした。

    絵画どうしが密着したインスタレーションもユニークで、フランシス・ベーコンとジャコメッティなどゆるい感じのコンセプトで繋がっていく、という普通学芸員だったらやらないようなアーティストならではのキュレーションがお見事でした。

    会期中はずっと展示替えをしていて、展覧会としても常に動きがあるというのも面白い。
    レンゾ・ピアノが設計した美術館建築も素晴らしく、この秋はマチスの大規模回顧展が予定されているそうです。

    バーゼル市立美術館(Kunst Museum Basel)
    ヴィトラハウス (Vitra Haus)

    もしも時間があったら、おすすめしたいのはバーゼル市立美術館とヴィトラ・ハウス。

    美術館は1662年に創設された世界で最も古い公共美術館のひとつで、今回はダン・フレヴィンの展示が良かったです。

    ヴィトラハウスはスイスとドイツの国境沿いにある広大なヴィトラキャンパスという敷地内にある旗艦店で、ホームコレクションの全てを体感できるショールーム機能も備えています。

    ヘルツォーグ&ド・ムーロンによる建築も見どころで、アートバーゼル期間中にはコレクター向けのV I Pパーティもありますが、私はもう次へ移動してしまっていました……。

    DENMARK

    スリー・デイズ・オブ・デザイン(3daysofdesign)

    次に向かったのは今回初上陸となるコペンハーゲン。

    お目当ては昨年10周年を迎えた3daysofdesign という今注目のデザインイベントです。
    最初は数社だけでオープンスタジオのような規模で始まったのが、だんだん増えて今では400社以上の展示があるとか。

    フリッツ・ハンセンやルイス・ポールセン、HAYなど北欧デザインはもちろん、今回はカリモクやアンビエンテックなど日本勢も参加し、インテリアトレンドを見る上でも見逃せないものとなっています。

    会場はミラノサローネのような大きな展示場でなく、倉庫とか海辺のビーチハウスみたいなところとか、街のいたるところに展示が散らばっているのが特徴です。

    コペンハーゲンはミラノや東京と比べても小さいので、どこも自転車でまわれるくらい。3泊しましたが、治安も良く、街並みも美しく、ヨーロッパの中で最もピースフルな空気が感じられて本当にいい街でした。
    食事はパンが世界一美味しい、と言われているだけあって、おしゃれなパン屋さんがたくさん。ただ料理は全体的に塩気が強かったかも?

    ルイジアナ近代美術館 ( Louisiana Museum of Modern Art )

    コペンハーゲンには現代美術のギャラリーはほとんどないのですが、電車で30分ほどの距離にあるルイジアナ近代美術館にはぜひ訪れていただきたいです。
    “世界で一番美しい美術館”とも称される自然と一体化した環境も素晴らしく、ピカソ、ジャコメッティ、アレキサンダー・カルダーやアンディ・ウォーホール、草間彌生など、コレクションも秀逸です。

    建物は元々個人邸だった館をリノベーションしたそうですが、最初のオーナーの3人の妻の名がみんなルイーズだったことからこの美術館の名前になったとか。

    北欧の夏は陽が長く、私が訪れたのは21時ごろですが、青空を背景にしたカルダーの大型屋外彫刻がとても気持ちよさそうでした。

    I T A L Y

    ヴェネチア・ビエンナーレ(Biennale Arte 2024)

    今回60回目を数える2年に一度の国際的なアートイベントで、今年のテーマは「FOREIGNERS EVERYWHERE(みんな外国人)」。
    先住民と開拓者として新しく入ってきた人たちとの関係性だったり、先住民たちのアートだったりのコンセプチュアルな展示でした。
    8割以上が初出展の作家で、自分もあまり見たことがないアーティストたちの作品がとても新鮮でした。
    日本館は毛利悠子さんのインタレーション作品で、ジョン・ケージやナム・ジュン・パイクにインスパイアされたとか。環境に影響される音のアートで、会場構成も素晴らしかったと思います。

    アカデミア美術館 (Gallerie Accademia, Venezia )

    1750年に創設された歴史ある美術館で14世紀からのヴェネツィア派絵画のコレクションで有名ですが、今回心を動かされたのはウィレム・デ・クーニングとイタリアの関係性についてとらえた「WILLEM DE KOONING L’ITALIA」という展覧会です。

    彼が1959〜69年まで滞在したイタリアで製作された作品にフォーカスした企画で、まるで書のような作品や、彼が初めて作ったブロンズの小さい彫刻などが展示されていました。彫刻は水面に浮いている人たちを作ったものなんですが、絵画作品のFloating ManとかFloating Womanとモチーフが一緒で、これらがブロンズ作品の流れからきているということが今回の展示で初めてわかりました。
    その後、彼の作風が80年代に向けて抽象化していくという系譜が把握できて、本当に勉強になる、今回のヨーロッパ周遊では一番良かった、ともいえる展覧会でした。


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