他人のツイートのスクショ投稿が著作権侵害に?Twitterユーザーが気を付けるべき点を紹介します
Twitterでは、他人のツイートを引用する際に「リツイート機能」を使用しますが、リツイートの代わりに元ツイートのスクリーンショット画像(スクショ画像)をツイートするといった行為(いわゆるスクショツイート)も日常的に見かけます。
しかし、2021年12月、東京地裁で、「スクショツイートは他人のツイートの著作権を侵害する」との判断が下されました。(判決文)
本記事では、なぜスクショツイートが他人のツイートの著作権を侵害することになるのか、今回の裁判のポイントをわかりやすく解説します。
目次
どのような裁判だったのか?
裁判の事案の経緯
2021年3月、Aさんが投稿したツイートを、Bさん・Cさんがスクショし、そのスクショ画像を添付してツイート(スクショツイート)しました。
Aさんは、Bさん・Cさんによるスクショツイートが自分のツイートの著作権を侵害しているとして、プロバイダに対しBさん・Cさんの発信者情報の開示(※)を求めて訴えを起こしました。
今回の裁判は、こうした発信者情報の開示の可否をめぐり、その前提として、Bさん・CさんのスクショツイートがAさんのツイートの著作権を侵害しているかどうか、が争われることになりました。
※ インターネット上の書き込みは匿名でされることが多いため、著作権侵害などの権利侵害を内容とする書き込みがあったとしても、その被害者は、書き込みを行った加害者が誰かを特定できなければ、損害賠償を請求することができません。そこで、被害者は、一定の条件を満たせば、プロバイダに対して、書き込みなどを行った発信者の情報(住所、氏名、登録された電話番号等)の開示を求めることができることとなっています(プロバイダ責任制限法4条1項)。
何が法律上の問題点となったのか
今回の裁判では、Aさんの主張が認められるかどうかを判断するにあたり、以下の2点が法律上の問題点となりました。
- ツイートは「著作物」にあたるか
- スクショツイートは「引用」にあたるか
まず、著作権侵害が認められるためには、Aさんのツイートが「著作物」であることが大前提になります。小説、漫画、音楽などが「著作物」として保護されることはもちろんですが、日常的なつぶやきであるツイートも同じように「著作物」にあたるのでしょうか。
また、Aさんのツイートが「著作物」だとしても、それを「引用」して利用するなど、適法に利用するものであれば、著作権を侵害することにはなりません。
スクショツイートは、他人のツイートを「引用」して利用するものとして適法な利用にあたるのでしょうか。
この2つの問題点について裁判所はどのような判断を行ったのでしょうか。
順を追って見ていきましょう。
ツイートは「著作物」にあたるか
著作物とは
著作物の4つの要
- 「思想又は感情」を表現したものであること
- 「創作的に」表現したものであること
- 「表現」したものであること
- 「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であること
ツイートの著作物性
では、Aさんのツイートは「著作物」にあたるのでしょうか。
まずは、争点となったAさんの各ツイート(以下、原告投稿1から4まで)を見てみましょう。
(出典)東京地方裁判所令和3年12月10日判決:https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/826/090826_hanrei.pdf原告投稿1
「こないだ発信者情報開示した維新信者8人のログインIPとタイムスタンプが開示された NTTドコモ 2人 KDDI 3人 ソフトバンク 2人 楽天モバイル 1人 こんな内訳だった。KDDIが3人で多数派なのがありがたい。ソフトバンクが2人いるのがウザい しかし楽天モバイルは初めてだな。どんな対応するか?」原告投稿2
「@B @C @D >あたかものんきゃりあさんがそういった人たちと同じよう 「あたかも」じゃなくて、木村花さんを自殺に追いやったクソどもと「全く同じ」だって言ってるんだよ。結局、匿名の陰に隠れて違法行為を繰り返している卑怯どものクソ野郎じゃねーか。お前も含めてな。」原告投稿3
「去年の今頃,「@E」とかいう高校3年生の維新信者に絡まれて勝手にブロックされて「何したいんだ,このガキ?」って事が さっき,あのガキのツイートが目に入ったんだけど受験に失敗して浪人するわ都構想は否決されるわで散々な1年だった様だ 「ざまあ」以外の感想が浮かばない(笑)」原告投稿4
「@C アナタって僕にもう訴訟を起こされてアウトなのに全く危機感無くて心の底からバカだと思いますけど,全く心配はしません。アナタの自業自得ですから。」
Aさんのツイートは、先ほど確認した「著作物の4つの要件」の、「『創作的に』表現をしたものであること」という要件を満たすかどうかが問題になります。
たしかに、小説、漫画、音楽など、額に汗して生み出したものこそが「創作的」なんだ、と考えると、Twitterで日常的につぶやくツイートのようなものは「創作的」とは言えないかもしれません。
しかしながら、著作権法上で「創作的」といえるためには、著作者の何らかの個性が表現されていればよい、と緩やかに解釈するのが裁判実務となっています。
今回の裁判においても、裁判所は「創作的」かどうかを緩やかに解釈し、Aさん(原告)の各ツイートについて、「その構成には作者である原告の工夫が見られ、また、表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。」として、いずれも「著作物」に該当すると判断しました(判決文9-11頁)。
こちらの事件ではチラシの表現や、その組み合わせの創作性が否定されました。
スクショツイートは「引用」にあたるか
「引用」とは
著作物を利用する場合でも、適法に利用するものであれば、著作権侵害にはなりません。
適法な利用として著作権法上認められているものの一つに、「引用」(著作権法32条1項)があります。
「引用」が認められるための4つの要件
- 公表された著作物であること
- 引用して利用するものであること(明瞭に区別されていること、かつ、主従関係があること)
- 公正な慣行に合致するものであること
- 報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものであること
スクショツイートと「引用」の成否
では、Aさんのツイートをスクショしてツイートする行為(スクショツイート)は、「引用」して利用する場合にあたるでしょうか。スクショツイートは、先ほど確認した「『引用』が認められるための4つの要件」の、「公正な慣行に合致するものであること」という要件を満たすかどうかが特に問題になります。
「公正な慣行」といえるためには、「世の中で著作物の引用行為として実態的に行われており、かつ、社会感覚として妥当なケースと認められる」場合であることと理解されています(加戸守行著「著作権法逐条講義 七訂新版」(2021年、著作権情報センター)302頁)。
こうした理解を前提とすれば、スクショツイートは、元のツイートが削除された場合やブロックされた場合をはじめ、Twitterで実態として使われており、また、そのようなツイート方法は社会感覚として妥当とも思われるため、「公正な慣行」に合致するようにも思われます。
しかしながら、今回の裁判において、裁判所はこれとは異なる判断をしました。
裁判所は、Twitterの規約では、他人のツイートを引用する手順として「引用ツイート」という方法を設けているにもかかわらず、これを使用することなくスクショツイートをすることは、上記規約に違反するものであるから、「公正な慣行」に合致するものとは認められないと判断しました(判決文12頁)。
その結果、スクショツイートは、「引用」して利用する場合には当たらないとされました。
まとめ
以上のように、今回の裁判では、スクショツイートは著作権侵害にあたる、との判断がなされました。
こうした裁判所の判断に対して、専門家の間では、スクショツイートについて一律に「引用」を認めないとするのは疑問である、などの批判的な意見も見られます。
もっとも、裁判所でこうした判断がされる可能性がある以上は、スクショツイートは著作権侵害のリスクがあると言わざるを得ない状況に変わりありません。
Twitterの正式機能である「引用ツイート」が使える場面では、できる限りそちらを使うようにするのが賢明でしょう。
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