言語切り替え
  • 商標はビジネスをブーストさせる大きな力!
    ファッション関係者は戦略的な商標取得を目指そう


    「ブランドが軌道に乗ってきたから商標登録しようと思ったら、すでに同じブランド名が登録されていてブランド名を変更しないといけないと言われた!」

    「似た名前のブランドから商標権を侵害していると警告書が送られてきた。聞いたこともないんだけど、対応しないとダメ?」

    商標トラブルはファッション関係者から弊所に非常に多く寄せられるご相談の一つです。
    商標登録をしなくてもビジネスは始められるため、つい後回しになってしまいがちですが、商標登録が遅れてしまうとブランド価値の低下や、大切なブランド名やロゴを変更しなくてはならない可能性もあります。

    このようなトラブルに巻き込まれるのを防ぎ、商標の力でビジネスの成長を加速させるにはどうすれば良いのでしょうか。

    本記事では、特許庁商標課商標制度企画室に出向経験のある中内康裕弁護士に、ファッション関係者の方々に向けて商標の基本と戦略的な商標登録の重要性について、わかりやすく解説していただきます。

    そもそも商標とは?

    商標とは、
    事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)」のことをいいます。

    (引用:2023年度知的財産権制度入門テキスト

    簡単に言えば、消費者に、自分の商品やサービスを視覚的に認識してもらうための目印のようなものです。
    例えば、「NIKE」「ナイキ」といった文字や、スウッシュマークを見たときに、多くの人の頭の中に「あのスポーツブランドだな」と思い起こされますよね。
    この「自分の商品やサービスを他と区別できること」が商標の最大の役割(自他商品等識別機能)です。商標はさらに①出所表示機能、②品質保証機能、③宣伝広告機能という3つの役割を持っています。

    ①出所表示機能

    同じ商標が付けられた商品やサービスは同じ出所(生産者やサービス提供者)から提供されることを示す機能です。

    ②品質保証機能

    消費者の「同じ商標が付いている商品やサービスには同程度のクオリティがあるだろう」という期待に応えるために、商標を持つ者(商標権者)は、商品やサービスの質の維持に努めようとします。

    ③広告機能

    商標が浸透し、消費者に認識されるようになると、商標がそれ自体で宣伝広告を担うことがあります。商標を広告に使うことで、その事業者の商品であることを消費者に伝え、「買いたい、使ってみたい」という気持ちを起こさせる機能です。
    「商標はもの言わぬセールスマン」と表現されることもあります。

    商標登録はなぜ重要なの?

    商標はブランドや企業のイメージそのものと捉えられることもあります。
    商標を第三者によって模倣されたり勝手に使われたりすると、得られるはずだった売上を奪われるだけでなく、低品質な商品やサービスが提供された場合、消費者からの信頼が損なわれ、ブランド価値が低下しかねません。
    大切なブランドを守るための鍵となるのが、商標登録です。

    商標登録がされると、大きく2つの権利を得ることができます。
    一つ目は「専用権」という、「その商標を独占して使用して良いですよ。」というお墨付きがもらえる権利です。
    もう一つは「禁止権」です。同じ商標や似たようなものを無断で使用している相手に対して、「その商標は私が権利を持っているので使わないで!」と使用をやめさせることができます。

    商標出願は早い者勝ち!登録が遅れた場合のリスクやデメリット

    商標はいつまでに登録しないといけないという決まりがありません。
    ビジネスを始めたばかりの時は何かと忙しく、お金も必要になるので、「商標登録は事業が軌道に乗ってからでいいかな。」と考えてしまいがちですが、実は商標登録のベストタイミングは、ビジネスを始める前~始めた直後なのです。
    なぜかというと、自分の商標の登録を他人が先に済ませてしまう可能性があるからです。

    商標登録は「先願主義」といって、同じ商標や似ている商標については、特許庁に先に商標登録の手続をした人に登録を認めるという仕組みになっています。
    先にその商標を使い始めたかどうかは関係ありません(先使用権の例外を除く)。先に商標登録を済ませた相手から商標権侵害の警告や損害賠償請求をされた場合、愛着を持って育てたブランド名やサービス名を変更しなくてはならないだけでなく、多額の賠償金を支払う必要があるケースもあります。

    ブランドやサービスを拡大していくために「商標登録は必要経費!」と割り切ることも大事です。

    費用は出願の区分数にもよりますが、自分で手続きを行う場合は大体3万~8万程度です。
    ただ、時間や労力がそれなりに必要な手続きになりますので、弁護士や弁理士のような専門家に依頼しても良いでしょう。弊所では、トータルのコストで10万~20万程度で対応できるケースもあります。

    登録済み商標を調べる方法

    ブランド名やロゴマークを考えたら同じ名前や似ている商標がすでに登録されていないか、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」などを用いて先行調査を入念に行いましょう。

    登録済みの商標を無断で使ってしまうと、それを知らなかったとしても商標権の侵害となる可能性が出てきます。
    また、他の人がすでに同じ名前や似ている商標を登録していると、特許庁に出願しても登録を受けることはできません。

    「似ている・似ていない」の判断は非常に難しいところなので、先行調査だけでも弁理士や弁護士などの専門家にお願いするのもおすすめです。

    注意したい商標登録の落とし穴

    商標登録には、注意したい点がいくつかあります。

    登録できない商標がある

    キャッチーで良いと思っても、シンプルすぎたり一般的な名称等は商標登録することができません。
    特許庁のホームページに登録できない商標について具体例が掲載されているので、ブランド名やロゴを決める際には一読してみることをおすすめします。

    特許庁:『出願しても登録にならない商標』

    権利の及ぶ範囲が細かく分かれている

    商標出願の際には、登録したい商標と商品・サービス(役務)が属する区分を具体的に指定し、セットで申請することになります。
    区分は第1類~第45類まであり、商標権は登録した区分の範囲でしか発生しません。 
    幅広い区分で登録すれば、より包括的に権利を保護できますが、その分取得費用も高額になってしまうわけです。

    ファッション関係では、被服及び履物の25類を基本に、かばんの18類、ジュエリーの14類、メガネ・サングラスなどの9類、香水の3類などを指定するのが一般的です。

    区分については、複雑な部分もあるため、 ビジネス全体がしっかりカバーできているがどうか、弁理士や弁護士といった専門家に確認してもらっても良いでしょう。

    商標権が取り消されてしまうことがある

    商標権の期間は登録をしたときから10年と定められており、この期間が経過すると商標権は消滅してしまいます。ただし、期間内に特許庁に更新登録手数料を納付することで権利を存続させることが出来るので商標権を長く持ち続けたい場合は更新時期を忘れないようにしましょう。

    また、商標登録したものの、全く使っていない区分については、「不使用取消審判」の手続を取られてしまうことがあります。
    不使用取消審判とは、「商標権を認めたのに、使用しないなら登録を取り消してしまう」という制度です。自動で取り消されるというものではなく、その商標を使いたい人などから請求があって初めて手続が行われます。

    不使用取消審判の手続は商標登録の日から3年が経過すれば誰でもすることができ、不使用取消審判が申し立てられた場合、「3年以上」「継続して」「日本国内で」登録商標が使用されていないときは特許庁によりその商標権は取り消されます。

    商標登録は国ごとに必要

    商標制度は国ごとの制度なので、日本で取得した商標権は海外では守られません。ブランド展開をする国ごとに商標権を取得する必要があります。

    日本で商標登録されているものでも、海外進出先の国では登録出来ない単語だったとか、すでに同じ名前の商標が取られていたという相談も非常に多いです。
    海外展開の際に、現地のセレクトショップやコラボレーション先と締結する契約書には、その国で商標登録を済ませているかを確認する条項が入っていることが多いのですが、海外では商標登録をしておらず、いざ調べてみたらすでに類似の商標があったために登録・販売ができないことがわかり、契約自体が白紙になってしまった、といったケースもありました。

    海外展開を考えている方は、そういったことも踏まえて世界で通用するブランド名をつけることをおすすめします。

    三村小松法律事務所の考える商標戦略

    商標は使い方によっては、ビジネスをブーストさせる大きな力になります。

    特許庁商標課に出向し商標法改正にも関わった私の他にも、ファッションを専門とした弁護士が複数在籍している弊所では、ブランディングの観点からの商標取得にも力を入れており、なるべく早いタイミングから依頼者様と一緒にブレインストーミングを行っています。

    どのような商標を出願するかや、出願のタイミング、先述した区分の範囲なども、依頼者一人ひとりの実情に合わせてご提案をさせていただいています。

    特に、海外進出を少しでも考えている方は、自分たちで各国の規則を調べて商標出願手続を行うのは多大な時間と労力がかかりますので、国外での商標登録にも豊富な実績がある弊所に是非一度お問い合わせいただければと思います。
    中でも、中国では、悪意のある第三者が新しい商標を片っ端から登録し、「この商標が使いたかったら何百万円で買い取ってください。」などと交渉してくる商標ビジネスが横行しているために、出願を考えているようであれば、一層の注意が必要です。

    弊所での日本における出願費用は、区分数にもよりますが、トータルコストで10万~20万程度で済む場合もあります。
    海外への出願は、国にもよりますが、日本での費用+15〜30万程度でファッションブランドに必要な範囲をカバーできる場合もあります。
    先行調査だけであれば、数万円程度で対応できるケースもございます。

    商標登録についてお悩みの方は是非 三村小松法律事務所 へご相談ください。


    本記事では商標の基本と戦略的な商標登録の重要性についてを中内弁護士に解説していただきました。次回は取りやすい商標や取りづらい商標について解説していただく予定です。

    本日解説を担当した中内弁護士のプロフィールについては、下記リンクからご覧ください。

    中内 康裕 NAKAUCHI Yasuhiro プロフィール


    法律相談・メディア出演のご相談はこちら

    お問い合わせ

    MiKoTamaメルマガ
    法律に関する様々な情報トピックをメルマガで配信

    登録する