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  • インスタのステマ広告に消費者庁が初の措置命令!景品表示法の広告規制とは?

  • #知的財産 #SNS

  • 一般的に、「消費者に宣伝と気づかれないようにされる宣伝行為」を指し、たとえば、芸能人やインフルエンサーが商品・サービスを宣伝したい企業から報酬をもらいながらそのことを隠し、本当にその商品・サービスのファンであるかのように装ってSNSなどでオススメするようなケースなどが典型的です。

    「ステマ」に対しては、だまされた!!裏切られた!!との思いから、ネット上での炎上事例が数多く見られます。ただ、こうした「ステマ」も、表向きの見た目は純粋な口コミやレビューなどの感想と変わらず、区別することが難しいため、依然としてネット上にはびこっているのが現状でしょう。

    こうした中、消費者庁は、令和3年11月、インスタグラムでのステマ広告が景品表示法に違反するとして、初の措置命令を発出し、その是正に乗り出しました。

    本記事では、ステマ広告がどういった理由から「違法」と判断されたのかなど、今回の措置命令に至ったポイントについて、分かりやすく解説します。

    どのような措置命令がなされたのか?

    措置命令の経緯

    平成30年3月頃以降、豊胸サプリメントを企画・販売する会社(以下「X社」といいます)は、サプリの販売にあたり、インスタグラムのユーザーらを通じて、サプリの容器包装の画像と共に、「貧乳が悩みなので2カップアップが目標!目に見える効果が出たらいいなぁ」「#バストアップサプリ」などの投稿をさせていたとのことです。

    インスタグラム内のアカウントの投稿表示の例
    (出典)消費者庁HP「株式会社アクガレージ及びアシスト株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(令和3年11月9日)
    別紙1:https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_20211109_01.p

    消費者庁は、これらの表示が景品表示法5条に定める「優良誤認表示(※後ほど説明します)」にあたり、同法に違反するとして、X社に対して措置命令を出しました。

    消費者庁による措置命令(概略)

    1. インスタグラムのユーザーらに書き込ませた広告表示を速やかに取りやめること
    2. これまでの広告表示は本件サプリが実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反していた旨を一般消費者に周知徹底すること
    3. 再発防止のための措置を講じること
    4. 今後同様の広告表示をしないこと
    5. 上記2の周知徹底・上記3の措置の内容につき、消費者庁長官に文書で報告すること

    (出典)消費者庁HP「株式会社アクガレージ及びアシスト株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(令和3年11月9日)
    別添1: https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_20211109_01.pdf をもとに筆者要約

    何が法律上の問題となるのか

    景品表示法は、事業者が提供する商品・サービスの品質、内容、価格等を偽って表示すること(不当表示)がないよう、事業者の行う宣伝・広告を規制する法律で、これに違反した場合には、今回の事案のように、措置命令等が下される場合があります。
    しかし、今回の事案は、事業者が自ら宣伝・広告をしているわけではなく、あくまでも「一般消費者」がインスタグラムに商品紹介を投稿したにすぎません。
    こうした一般消費者の商品紹介や口コミ等であっても、景品表示法上の不当表示にあたるとして、事業者が責任を負わなければならないのでしょうか。

    また、今回の投稿は、「貧乳が悩みなので2カップアップが目標!目に見える効果が出たらいいなぁ」などと、投稿者の期待を述べているにすぎず、「2カップアップする効果がある!」などと、商品の効果・効能について直接的に言及しているわけではないとも思えます。
    こうした内容であっても、景品表示法上の「優良誤認表示」にあたってしまうのでしょうか。

    まとめると、今回の事案においては、以下の2点が法律上の問題となります。

    • 事業者は、一般消費者による商品紹介・口コミ等の投稿にまで、景品表示法上の責任を負わなければならないのか。
    • 一般消費者の主観的な内容を述べるにすぎなくても「優良誤認表示」にあたるか。

    それでは、そもそも景品表示法とは何か?といったところから、順を追って見ていきましょう。

    景品表示法とは?

    景品表示法の規制

    景品表示法の正式名称は、「不当景品類及び不当表示防止法」(昭和37年法律第134号)といいます。
    わたしたち一般消費者がより良い商品・サービスを自主的・合理的に選べる環境を守るために、商品・サービスの品質、内容、価格等を偽って表示すること(不当表示)などを規制する法律です。

    景品表示法では、商品・サービスを提供する事業者が、消費者に誤認される不当な表示として、「優良誤認表示」、「有利誤認表示」、及びその他の誤認されるおそれがある表示を行うことを禁止しています(景品表示法5条)。

    不当表示の概要と具体例

    不当表示の3つの類型について、それぞれ概要と具体例を見ていきましょう。

    不当表示の3つの類型

    • 優良誤認表示の禁止
    • 有利誤認表示の禁止
    • その他、誤認されるおそれがある表示の禁止

    「優良誤認表示」とは、商品・サービスの品質・内容などについて、実際のものよりも著しく優良であると表示したり、事実に反して同業他社のものよりも著しく優良であると表示したりする広告のことをいいます。たとえば、「松阪牛」ではない国産牛肉を、あたかも「松阪牛」かのように表示して販売する場合には、これに当たります。

    「有利誤認表示」とは、商品・サービスの価格などについて、実際よりも取引相手に著しく有利であると表示したり、事実に反して同業他社のものよりも著しく有利であると表示したりする広告のことをいいます。たとえば、あたかも今月だけ割引キャンペーンが適用されるかのように表示して販売しながらも、実際には何年にもわたって割引キャンペーンを実施していた場合には、これに当たります。

    このほか、誤認のおそれがある表示として、内閣総理大臣が個別に指定する表示が禁止されています。
    たとえば、お客を来店させるために、実際には売っていない商品をあたかも販売しているかのように表示する場合(いわゆる「おとり広告」)などがあり

    一般消費者の投稿も規制対象となるのか

    口コミ情報と景品表示法

    景品表示法の「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品・サービスの内容や取引条件等について行う広告等の表示を意味します(景品表示法2条4項)。

    これを前提とすれば、一般消費者は商品・サービスを自ら供給するわけではなく、上記の定義には該当しないため、原則として、一般消費者による商品紹介・口コミ等の投稿などは、景品表示法上の問題が生じることはないと言えます。

    とはいえ、インターネット上の一般消費者による商品紹介・口コミ情報、特に芸能人やインフルエンサーの投稿は、日々私たちが商品・サービスを選択する際に参考とする情報として大きな影響力を持っていることを考えると、全て景品表示法上の対象外とするのも適切ではありません。

    そこで、消費者庁は、景品表示法と口コミ情報との関係について、一般消費者により掲載されたものであっても、顧客を誘引する手段として、商品・サービスを供給する事業者が依頼して掲載させているものであって、それが「優良誤認表示」や「有利誤認表示」に該当する場合には、景品表示法上の「不当表示」として問題となる、との解釈を示しています。

    (参照)消費者庁「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」

    口コミ情報と景品表示法とのポイント

    原則:景品表示法上の問題は生じない
    例外:商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該「口コミ」情報が「優良誤認表示」や「有利誤認表示」に該当する場合には、景品表示法上の「不当表示」として問題となる

    今回の事案との関係

    今回の事案では、インスタグラムのユーザーらが、インスタグラム内にした投稿が問題となりました。
    これらの投稿については、サプリを販売するX社らが、インスタグラムのユーザーらに対して投稿内容を具体的に指示し、表示内容を自ら決定していた、との事実があったとされています。
    こうした事情から、これらの投稿は、一般消費者による投稿であっても、事業者であるX社らが依頼して掲載しているものとして、X社らが景品表示法上の問題が生じることになったものと考えられます。

    主観的な内容を述べても「優良誤認表示」にあたるのか

    主観的な内容と景品表示法

    事業者が第三者に依頼して口コミ情報等を掲載させた場合には、事業者がその責任を負い得るものの、その表示内容が「優良誤認表示」などに該当しなければ、特段の問題が生じるわけではありません。

    では、「この商品すごく良い!」「これ私のお気に入りです!」などといった主観的な内容の投稿は、「優良誤認表示」に該当するのでしょうか。

    たしかに、商品・サービスそのものに言及しているわけではないため、その品質・内容等が実際のものより著しく優良であるなどと誤認されるおそれがあるとは言えないようにも思われます。

    もっとも、「優良誤認表示」が対象とする商品・サービスの品質・内容等については、商品・サービスについて他者がどのような評価をしているか、どのような人物が利用しているか、なども含むものとして一般的に広く解釈されています。

    (参考)西川康一「景品表示法[第6版]」(商事法務、2021年)84-85頁  

    したがって、商品・サービスそれ自体の品質・内容等には言及せずに、好意的な評価を述べるのみであったとしても、実際にはそうした好意的な評価がされている事実は「ない」にもかかわらず、「ある」かのように誤認させているという意味において、「優良誤認表示」に該当し得ることになります。

    今回の事案との関係

    今回の事案では、サプリを販売するX社らが、インスタグラムのユーザーらに投稿させた「貧乳が悩みなので2カップアップが目標!目に見える効果が出たらいいなぁ」などの表示について、「優良誤認表示」に該当するかが問題となります。

    こうした投稿の表示内容は、サプリそれ自体の効果等に言及しているわけではありません。
    もっとも、貧乳に悩んでいた女性が自らの意思で好意的な評価をしているという事実が「ある」かのように表示している一方で、実際にはX社らの指示により投稿されているにすぎず、そうした事実が「ない」といえます。

    こうした事情から、これらの投稿は、たとえ主観的な内容の投稿であっても、「優良誤認表示」にあたるとの判断がなされたものと考えられます。

    まとめ

    インスタのステマ広告について、消費者庁の措置命令が出された事案を題材に、景品表示法の広告規制の概要とともに、ステマ広告はどのような理由から「違法」と判断されたのかなど、今回の事案のポイントについて解説しました。

    今回、初の措置命令が出されたことをきっかけに、ステマ広告に対する規制や行政処分が今後ますます厳しくなっていくことも予想されますので、今一度、自社の宣伝・広告のあり方を振り返っていただき、不安な点や悩みなどがあれば、早め早めに専門家にご相談されることをオススメします。

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